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その後、必要最低限を纏めた匡と共に家を出た。 恐らくきっともう来ないであろうその家に背を向け、祥也の住む部屋へと帰り、ひと段落した時のこと。 「兄貴ー! 本当に本当におれのせいでごめんー!」 「⋯⋯分かったから離れてくれ。暑苦しい」 「うげっ」 無理やり引き剥がすと、「ひどいっ!」と騒いだ。 「おれのせいで二度も同じところを叩かれて、未だに赤くなっているから心配していたのに! にーちゃんのバカっ!」 「ジルヴァがその分やってくれているから、お前はいらない」 「いらない⋯⋯っ!?」 雷に打たれたような衝撃を食らった様子の匡は、固まっていたのも束の間、「いたいのいたいのとんでけー!」を一生懸命してくれているジルヴァに泣きついた。 「ジルヴァ〜! ひどくない? おれ、いらないって言われたんだけど!」 「うーん⋯⋯おいださないので、じょーだんというものです」 「⋯⋯! そうだよ! 今まではそうする気満々だったけど、口だけだもんね! ジルヴァ、分かってるぅー!」 思いきり抱きついては、思いきり頭を撫でていた。 馬鹿馬鹿しい。 一人ため息を吐いた祥也は、さっさと布団を敷いて、潜り込んだ。──と。 「⋯⋯おい、これは何のつもりだ」 「へへ、おれがこうしたいからこうしただけ〜」 「ぼくも、しつれいします」 前にはジルヴァ、後ろには匡が何故かくっついてくる意味の分からない体勢。 いつもならば鬱陶しいと思うその温もりが、今は心地よいと思ってしまった。 こんなことを思う日がくるなんて。 なんだか笑えると、自然と笑みを零していた祥也はそのうちそのまま寝にいっていた。 夢の中で、匡が張り切って作った料理を囲んで笑いながら食べる光景を見ていた。 幸せだと思える夢を──。
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