0人が本棚に入れています
本棚に追加
そういうわけで、美沙代はこの銅像の前に立っているのだ。
けれども美沙代は疑問だった。
この銅像のどこが、そんなに刺激的なのだろう。
着物姿の女性はただただ美しく、優しい母性を備え、愛おしそうに子を見下ろしている。まるで和装版、聖母マリアのような姿だ。
寝ている子の表情も穏やかで、幸せそうだ。
「うう〜ん…謎だ」
とりあえず触っておくか。
美沙代は銅像の目の前まで進み、その女性の肩にそっと触れてみた。
目を瞑って、子宝に恵まれますように、と祈りを捧げてみる。岩肌に当たる波の音、鳥のさえずり、心地よく降り注ぐ日の光が、美沙代を包んでいる。なんだか心がポカポカと温まってくる気分がした。
そういえばこの銅像、思ったより硬くないな…むしろやわらかいような。本当に女性が布をまとっているような…?
美沙代は疑問に感じて、目を開けた。
すると、どういうことだろう。
女性が微笑みながら、美沙代と目を合わせている。色を持った、生きているとしか思えない、生身の女性だった。
最初のコメントを投稿しよう!