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「きゃあ!!!」
美沙代は後ずさり、尻もちをついた。
「まぁ、驚かせてしまいましたね」
「おぎゃあ、おぎゃあーん!」
美沙代の叫び声のせいか、女性が腕に抱いている赤ちゃんまで泣き出した。紛れもなく、生きている赤ちゃんだ。
「どどど、銅像が、動いた…」
「大丈夫ですよ。危害を加えたりはしませんから」
「ななな、なんで…」
「おぎゃあ、おぎゃあー!」
「よしよし、もう少し眠っていて大丈夫ですよ」
女性は赤ちゃんの背中をトントンと叩きながら、左右に揺れている。赤ちゃんは安心したのか、すっと目を閉じ、むにゃむにゃとまた眠り始めた。
「申し遅れました、私、木花咲耶姫と申します」
「このはな…?姫…?」
「ご存じないですか。一応、子宝、安産の祈願で祀られることも多いんですよ」
「そ、そうなんですね…」
聞いたことがあるような、ないような。神話の神様で、そんな人がいたような気がしないでもない。
「まぁ、私のことは良いのです。せっかく遠路はるばる来ていただいたので、お話を聞きましょう」
「えっ…」
「なにかお悩みなんですよね?」
にっこりと微笑む木花咲耶姫は、今まで見たどんな美女も霞むほどの美しさだった。男性でもない美沙代が、うっとりしてしまうほどだ。
「あ、ありがとうございます。実は…」
美沙代は話し始めた。
幼い頃から、将来家庭を築くのが夢だったこと。3年前から不妊治療に励んでいること。それでもなかなか授からず、夫の修也にあと一回で終わりにしようと告げられていること。
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