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木花咲耶姫は嫌な顔ひとつせず話を聞いていた。
「私、あと一回しかチャンスがないと思うと、気が気じゃなくて…もしダメだったらって思うと」
「それはつらい想いをされていますね」
「あの…姫。私、どうしても子どもを授かりたいんです。お願いします。なんでもしますから」
「落ち着いてください。私には、次の機会に必ず子を得られるという約束はできません」
「えっ…そうなの」
美沙代は肩を落とした。もし妊娠できなかったら、なんのためにわざわざここまで来たのだろうか。
「ただし、ヒントを与えることはできます」
「ヒント?」
「はい。口で説明するより、見ていただいた方が早いので、今からイメージを流しますね」
「え?」
ーーーパチン!
木花咲耶姫が指を鳴らすと同時に、美沙代の視界が暗くなった。
ゆっくりと脳内に映像が浮かび上がってくる。美沙代と修也の日常風景だ。誰かがカメラで録画していたものを、脳内に流しているようだった。
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