返事

7/7
前へ
/219ページ
次へ
 帰ろうとしたその刹那、ピタと視線が止まる。たった今、あの家から人が出てきたから。音咲(おとさき)くんと同じ歳くらいの、端整な顔立ちの男の子だ。  そして、遠くをじっと見つめている。悲愁を纏い去り行く音咲くんの背中を、どこか苦痛さえ窺える表情(かお)で。そして……どうしてか、僕はその表情(かお)を知っている。そして、今の……あの日の、音咲くんの表情(かお)も―― 「…………っ!!」  刹那、脳裏に稲妻(ひかり)が走る。そして、そっと目を(つむ)り思う。……根拠なんて、何もない。言ってみれば、ただの直観……それでも、自分でも不思議なほどに揺るぎない確信を覚えていて。
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加