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帰ろうとしたその刹那、ピタと視線が止まる。たった今、あの家から人が出てきたから。音咲くんと同じ歳くらいの、端整な顔立ちの男の子だ。
そして、遠くをじっと見つめている。悲愁を纏い去り行く音咲くんの背中を、どこか苦痛さえ窺える表情で。そして……どうしてか、僕はその表情を知っている。そして、今の……あの日の、音咲くんの表情も――
「…………っ!!」
刹那、脳裏に稲妻が走る。そして、そっと目を瞑り思う。……根拠なんて、何もない。言ってみれば、ただの直観……それでも、自分でも不思議なほどに揺るぎない確信を覚えていて。
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