寂しい微笑

1/3
前へ
/219ページ
次へ

寂しい微笑

「ごめんね、音咲(おとさき)くん。こんな時間に、わざわざ来てもらって」 「……まあ、別にいいけど……でも、いったいなんの用?」  翌日、放課後にて。  そう、怪訝そうに尋ねる美少年。今、僕らがいるのは四階隅の教室――現在(いま)はもう使用されていない、半ば物置きと化している空き教室で。  ところで、放課後とは言ったものの――外は、もうすっかり茜色に染まっていて。つまりは、とうに授業が終わった後、わざわざ時間を空けて来ていただいたわけで。もちろん、申し訳ないとは思ったけど……だけど、万が一にも他の人の耳に入っちゃいけないから。と言うのも―― 「……うん、どうしても聞きたいなと思って。きっと誰にも言えず独りで抱えている、君の苦痛について」  
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加