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後悔
『――ほら、早く来いよ唯月!』
『……ま、待ってよ成海くん』
五年前の、夏の日のこと。
小学校からの帰り道、駆け足のまま後方へと呼び掛ける。手を膝に突きこちらをみつめる、柔らかな顔立ちの美少年へと。
彼は、杉崎唯月――前年からのクラスメイトで、俺にもって唯一無二の友人だ。……全く、しょうがないなぁ唯月は。
『ほら、唯月』
『……あ、ありがとう成海くん』
『……お、おう』
そう、駆け寄り告げる。すると、そっと手を出し掴む唯月。さっと差し出した、俺の右手を。
……この時は、まだ知らなかった。その時の彼の笑顔に、その手の温もりに、どうしてこんなにも心臓が脈打つのか。
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