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――すると、そんなある日のことだった。
『――あの、唯月くん! その……あたしと、付き合ってほしいの!』
放課後、校舎の裏からふと届いた大きな声。誰の声かは分からない。分かるのは、たぶん女子だということくらい。……でも、その相手――告白の相手については、俺のよく知る……いや、でも名前が同じ別人の可能性も――
『……その、ありがとう。三澤さんの気持ち、すごく嬉し――』
……うん、唯月だ。間違いなく、俺のよく知る優しい男子だ。まあ、驚きはしないけど。少し気弱だけど、モテる要素も多いと思うし。
ともあれ、その後も悪いとは思いつつも耳をそばだてる。すると、聞こえてきたのは申し訳なさそうな唯月の声。そんな彼の言葉で生じたのは、どうしてか心からの安堵……そして、それまで覚えのないほどの速度で脈打つ鼓動。そんな、我ながら何とも不可解な状態の中――
『…………そっか』
そう、ポツリと呟く。……そう、分かっていた。きっと、とうの前から分かっていたんだ。
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