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僕の言葉に、目を丸くする音咲くん。まあ、そうなるよね。全く以て何の脈絡もなさそうな発言だし、それ以上に――
「……ふざけてんの?」
そう、じっと僕を見つめ尋ねる。息を呑むほどに綺麗なその瞳には、明確に怒りの色が宿っていて。そんな彼に、僕は――
「ううん、ふざけてなんかいない。僕は、本当に君を――」
「――それがふざけてるって言ってんだよ!!」
直後、後方から衝撃が響く。きっと、黒板に直撃したのだろう。直前、音咲くんが放ったスパナが黒板に――
「……あ、その……ごめん……」
すると、ややあって謝意を口にする音咲くん。僅かに掠り血の零れた、僕の左の頬を真っ青な表情で見つめながら。分かってはいたけど、彼とて意図した行動ではなく……あまりの衝動に、脳が指令するより前にすぐ傍にあった物を投げてしまっただけなのだろう。……実際、頭が真っ白になったんじゃないかな。それなりに大きかったはずの、扉側から響いたもう一つの衝撃にまるで気が付かないくらいに。
だけど、謝る必要なんてない。それほどの衝動を彼の中に生じさせてしまったのは、この僕。気にしないでと伝え、そのまま彼をじっと見つめる。そして――
「……僕は、人を死なせてしまったんだ。その尊い想いを僕に告げてくれた、大切な友人を」
「…………へっ?」
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