……うん、きっとここまで。

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「……でも、それでも……」  そう、少し顔を附せ呟く音咲(おとさき)くん。きっと、頭では分かっている。だけど、感情(きもち)が許さない。何も間違っていない、罪なんて何一つない――そう言って友希哉(ゆきや)を肯定することで、結果的に自身を肯定してしまうことを感情(きもち)が許さない。ほんと……蒔野さんといい君といい、優しいにもほどがある。ほんと、僕なんかには眩しいくらいに。  ……うん、きっとここまで。僕じゃ、きっと彼の心は動かせない。だから―― 「……ねえ、音咲くん。今だったら、信じてくれると思うんだけど……さっき言ったこと、ほんとだよ。僕は君のことを本当にすごいと思うし、心から尊敬している。だって……君はそんなにも辛く苦しい思いをしたのに、大切な友人のことを一番に心配して、必死で護ろうとして……そして、今もずっと助けようと頑張っているんだから」 「…………由良(ゆら)」 「……でも、僕じゃ君の心は動かせない。だから――」 「……? どうしたん……っ!!」  刹那、弾かれたように目を見開く音咲くん。僕が移した視線の先――扉の方をじっと見ながら。そこには―― 「……その、久しぶりだね……成海(なるみ)くん」  そう、仄かに微笑み告げる端整な少年。そんな彼に、茫然とした表情(かお)の音咲くん。それから、ややあって―― 「…………いつ、き……」
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