伝えたかった言葉

3/6
前へ
/232ページ
次へ
 ほどなく、ゆっくり扉を閉め教室を後にする僕。そして、少し歩みを進め角を曲がったところで―― 「……お待たせ、蒔野(まきの)さん」 「……いや、お待たせも何も……私が、勝手に聞き耳立ててただけですし」 「……まあ、それでもだよ」  そう伝えると、少し面映ゆそうに答える清麗な少女。きっとさっきまでは扉の近くにいたんだろうけど、ここまで移動してきたのは……まあ、僕と同じ理由だろう。そして、そもそも彼女が来ていた理由も―― 「……もう、大丈夫ですね。あのお二人も」 「……うん、そうだね」  そう、柔らかな微笑で告げる蒔野さん。そんな彼女に、僕も微笑み頷いた。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加