小さくて大きな一歩

1/2
前へ
/234ページ
次へ

小さくて大きな一歩

 ――それから、翌朝のこと。  一年二組の教室にて――ホームルームの少し前、皆の視線が一点に集まる。開いた扉の前にじっと立つ一人の男子生徒、音咲(おとさき)くんへと。どうして入らないのか――そういう疑問もあるかもしれないけど……きっと、皆感じているのだと思う。音咲くんの様子が、雰囲気がどこかそれまでと違うということを。  おはよう、音咲くん――もちろん、教師なら真っ先にそう言うべきなのだろうし、きっと普段ならそうしてると思う。だけど……きっと、今は違う。今、僕がすべきは――ただ、彼を見守ること。すると、少しの間があった後―― 「……えっと、その……おはよう、みんな」
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加