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「……でも、あんまり無理はしないでね? 恭ちゃん。もちろん、大切な生徒を心配するなという方が無理だろうし、教師としてはそうあるべきだとも思うけど……それでも、心配が行き過ぎて恭ちゃんが苦しんじゃったら元も子もないから」
「……薺先輩」
そう、僕の顔を覗き込むように話す薺先輩。その綺麗な瞳には、僕でも分かるほどにありありと不安が揺れていて。……本当に、有り難いな。これは僕が解決すべき件なのに、こんなにも僕のことを気に掛けてくれて。なので――
「……いえ、どうか心配なさらないでください薺先輩。僕は無理はしていませんし、蒔野さんのことは必ず僕が救……いえ、彼女の力になってみせますから」
そう、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめて告げる。……いや、まあわざわざ言い直すこともないのだろうけど……やっぱり、救うなんて言うと随分と烏滸がましい気もするし。
ただ、それはともあれ……これで、少しでも彼女の不安を払拭することが出来たら――
(…………だから、不安なんだけどな)
「……へっ?」
すると、微かに届く先輩の言葉。視線だけで尋ねてみると、何でもないよと首を横に振る薺先輩。
……もちろん、分かっている。僕が彼女を不安にさせてしまっていることは、流石に分かっている。……だけど、何か……どうしてか、何か違和感のような感覚が胸中を渦巻いて。
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