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「…………」
そう、仄かな微笑で尋ねる蒔野さん。そんな彼女に、思わず口を噤む僕。だけど、
「……中学時代、君が同級生のことを殺した、という噂のことかな?」
そう、逡巡しつつも尋ねてみる。流石に、分かっていた。再び彼女と向き合う上で、この話は決して避けて通れないということは。ならば、せめて僕の口から口にするべきだと思った。そして――
「――だけど、そんなのはただの噂……それも、この上もなく悪質な噂。もちろん僕も、クラスメイトの誰も信じちゃいないから、どうか……」
どうか、安心してほしい――そう告げようとして、止める。……馬鹿か、僕は。あんな噂が流されて、安心なんて出来るはずもないのに。今だって、きっと無理に笑顔を――
「――お気遣い、ありがとうございます由良先生。ですが、生憎ながら事実なんです」
「…………へっ?」
刹那、思考が止まる。……いや、きっと聞き間違いだよね。蒔野さんが、そんなこと――
すると、困惑する僕に再び微笑みかける蒔野さん。そして、ゆっくりと口を開き言葉を紡いだ。
「――言葉の通りですよ、先生。中学時代、私は一人の女子生徒を死なせました」
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