蒔野有栖

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蒔野有栖

「――おはようございます、皆さん。今年から、当校にて皆さんの担任を務めさせて頂きます、由良(ゆら)恭一(きょういち)と申します。まだまだ至らぬ身ですが、どうぞ宜しくお願いします」  桜が徐々に満開へと近づく、麗らかな春の日のこと。  京都市内の公立校、明陽(めいよう)高校――その四階に在する、一年二組の教室にて。  教壇からぐるりと見渡しつつ、どうにか緊張を抑え挨拶を述べる僕。……いや、流石に堅すぎたかな。見ると、クスッと笑っている生徒もちらほらいるし。……でもまあ、笑われてるならまだ良いよね。  さて、改めまして――僕は、由良恭一。大学卒業から数年、大手家電メーカーで勤務した後、教職の道へ。そして、教師二年目の今年、初めて担任のクラスを受け持つことに決まって。……うん、頑張ろう。  
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