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第1話 魔法学校からの手紙
クラルテ王国。
ここは昔から『魔法の国』と呼ばれ、国民の約三割が何らかの魔法を使える能力を持っている。
その中でも、特に魔力に優れている者は十六歳になると魔法学校に通い、自分の魔力をさらに高めるような教育を受けることになる。
エミリア・ソルシエール 十六歳。
下級貴族であるソルシエール男爵家の次女。
かくいう私も、微弱ながらも治癒魔法を使える能力を持って生まれてきた。
しかし微弱な魔力ゆえに、魔法学校への入学は私自身も私の両親も初めから諦めていた。
そんなある日、国の魔法学校の中でもトップクラスにある『レーヴ魔術学院』から私宛てに手紙が届いた。
「私宛てに? レーヴ魔術学院から?」
「はい。確かにエミリア様宛でございます」
長年この家で執事を務めているニコラが、掛けている眼鏡を押し上げながら一通の手紙を私に差し出した。
私は訝しげにその手紙をニコラから受け取ると、まじまじと手紙の宛名を見つめた。
確かにそこには、私の名前とレーヴ魔術学院の名前が綺麗な文字で書かれている。
不審な気持ちを抱えたまま、私は思い切って手紙の封を開けた。
手紙を広げ読み進めるうち、私は驚きのあまりガクガクと震えて手紙を落としそうになってしまった。
「えっ……嘘……」
その様子を見ていた父親のソルシエール男爵は、何かあったのかと心配しながら私に駆け寄ってきた。
「どうしたんだ、エミリア! そんなに震えてどこか具合が悪いのか?」
「ううん、違うの……。お父様、これ見て! 私、レーヴ魔術学院の特待生に選ばれたのよ!」
「何だって? どれどれ……すごいじゃないか、エミリア! いや、しかし、レーヴ魔術学院は学費が高いのだろう? うちのような貧乏貴族では……」
ソルシエール男爵は、手紙を私に返すと暗い顔で近くにあった椅子に座りながらため息をついた。
「よく見て、お父様。ここに、学費等は一切要らないって書いてあるわ。全寮制で生活費も無料ですって!」
「おお! それはありがたい。エミリア、せっかくの機会だ。今、お前の治癒魔法は微弱だがレーヴ魔術学院で学ぶことで人々を救うくらいの魔力が得られるかもしれない。行ってきなさい」
「はい……私、レーヴ魔術学院で三年間しっかり魔術を学んできます!」
こうして、私はなぜかレーヴ魔術学院の特待生に選ばれ、その門をくぐることになったのだった……。
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