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第2話 姉との再会
レーヴ魔術学院から手紙を受け取ってすぐに、私は母から借りたトランクに下着や数枚の洋服などの必要最低限の物を詰め込んで家を出ることにした。
手紙には、「五日以内に学院に来るように」と書かれていたからである。
クラルテ王国北部の山間部に位置するレーヴ魔術学院に行くためには、いくつかの街を通り過ぎなければならない。
我が家の古い馬車では遠出は無理と判断したソルシエール男爵の判断で、途中の街にあるクレマン子爵家に嫁いだ姉リアナのところの馬車に乗り継いで学院まで行くことになった。
見送ってくれる両親への挨拶もそこそこに、私を乗せた古い馬車はリアナが住む屋敷に向かって走り出した__。
***
「エミリア! 久しぶりね!」
クレマン子爵家に到着すると、屋敷の入り口で手を振りながら私を呼ぶリアナの姿があった。
リアナ・クレマン 二十歳。私の姉。
十八歳でクレマン子爵家の長男であるマティスと結婚。
現在、二児の母親としてクレマン家で幸せな生活を送っている。
「お姉様! お久しぶりです! お元気そうでなによりです」
「元気よ。それにしても驚いたわ。エミリアがレーヴ魔術学院に入学するなんて!」
リアナはそう言って私の手を握ると、自分のことのように嬉しそうな笑顔を向けた。
「私は魔法を使えないからずっとエミリアを羨ましく思っていたの。私が怪我をするといつも治癒魔法で治してくれたわよね」
「少しの怪我しか治せなくて恥ずかしいです。でも、学院で勉強すればこの力をもっと強くして困っている人々の役に立てるようになるかもって思ったんです」
リアナが握ってくれた手の温もりを感じながら私が恥ずかしそうに下を向くと、リアナは私の顔を覗き込んで言った。
「そうよ! せっかく特待生になれたんだもの。たくさん魔法の勉強をしてきなさい。それに……」
「それに?」
口籠ったリアナを私が見上げると、リアナは悪戯っ子のような顔をして私を見つめている。
私が不思議そうに首を傾げると、リアナはなぜかうきうきした様子で答えた。
「それに、レーヴ魔術学院にはたくさんの上級貴族のご子息たちが通っているんでしょう? 未来の旦那様を見つけるチャンスじゃない!」
「えええ!!!」
婚約者、ましてや結婚のことなんて全く考えていなかった……。
予想もしなかったことを言われて驚いてしまったが、私はその場を誤魔化してリアナにお礼を言った後、いつまでも手を振って見送ってくれるリアナに感謝しながらクレマン家の馬車に乗って再び学院に向けて出発したのだった。
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