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「ここは、第3訓練場。ミドリ様が担当の女神様です。この飲食スペースは、共有スペースですので、休憩以外にも、ご自由に使用できます。食事は全て係のものが作ります。代金は、訓練場でドロップしたアイテムを、換金してご利用ください。換金所はゲームコーナーにあります」
「タダでは食べられないんですね」
「それはそうですよ。ここは、訓練場ですから。タダで食べれると知れば、訓練しない方も出てきてしまいます」
「誰かのアイテムを、奪う方もいるのでは?」
「ご心配なく。その時点で天界裁判所へ連行されます」
「監視カメラでもあるんですか?」
「そこは、守秘義務なので答えられません。」
ハクトさんはそう言いながら、ズンっと顔を近づけた。
(怖いって…!)
「言っても分かりにくいでしょう。実際に見せますので、ついてきてください」
ハクトさんは僕を置いてスタスタと行ってしまう。一笑懸命動くも、前に進まない。
(なんて進みづらい体なんだ)
僕が進みにくそうにしていると、ハクトさんが戻ってきて、僕を持ち上げる。
「はぁ、仕方ないですね。今回は時間が押しているので、手伝ってあげます」
そう言って、僕を手にのせた。風船いっぱいの部屋の前まで歩いて行く。
「この先は、1人で行ってください。緊急時以外は、女神様もたち入れません。なお、外部からの通信は可能です。死んでもこちらに転送されるので、ご安心を。中に入ったら、わたくしの指示に従ってくださいね。」
僕は下ろされ、1歩進む。謎の光に包まれ見えた景色は、山の中だった。大きな木が沢山あり、根っこが所々むき出しになっている。
『あーあー、聞こえますかー。聞こえたらジャンプしてみてください』
僕は精一杯飛び跳ねた。
『大丈夫そうですね。では───ザー…ザザザザこれから…ザザザ』
ノイズ音が耳に響く。
(嫌な予感がする。これはもしや…)
大きな地響き。不穏な空気が漂う。
『グァァァァ!!』
「あー!やっぱりそう来たか!」
僕は後ろを振り向く前に、意識が無くなった。
………
…
…。
(あれ?)
目が覚めても、目の前は山の中のまま。違いがあるとすれば、地響きと鳴き声が聞こえいくらい…。
「ごきげんよう」
突然、後方から声をかけられた。後ろを振り向きたいが、動けない。
「その姿、哀れですわね。まぁ、面白いサンプルとして成長されているようで、今後が楽しみですわ」
振り向けた時には、もう誰もいなかった。再び地響きがなる。
『グァァァァ!!』
鳴き声が聞こえた時には、僕の視界は真っ暗になっていた。目覚めると、ハクトさんが覗き込んでいた。
「大丈夫ですか?」
「大丈ばないですよ!ノイズが聞こえて、ドラゴンらしき鳴き声がしたと思ったら、目の前真っ暗で!」
「ふふ。びっくりしたでしょう。ノイズの演出には凝っていましてね。ヒヤヒヤしたでしょう。ふっふっふっ」
「死んだら意味ないでしょう!アイテム取れて…」
コロコロと小さな石のようなものが、僕の傍に転がっていた。
「アイテムが、何ですか?」
(多分、にやにやしている。着ぐるみで分からないけど)
「僕、倒してないのに!?何故?!」
僕が驚いていると、ハクトさんは続けた。
「それが、ドロップアイテムです。ドラゴンは、サプラーイズ。勝手に死ぬ設定です」
「なぜ、わざわざここまで…」
「そ・れ・は・怖がる顔が、見たくて♡」
「色々怖いって!!」
「まぁ、とにかく。そのアイテムを、わたくしに渡すとします。そしたらーじゃじゃーん!500コインさしあげます!」
「あ、ありがとう、ございます」
「喜んでください。つまらないです」
「すみません」
(なぜ謝っているんだ?)
と疑問に思いながら、内心とても嬉しかった。久々の人間らしい食事が出来るのだ。喜ばずにいられない。
「お店、沢山あるので迷いますよね。貴方のような小さい方用の場所は換金所の近くにあります。時間が押しているので、後程見て下さい。そろそろ他の方々が訓練から戻ってくる時間です。今いる仲間を紹介します」
そう言うと、風船のある部屋から次々と多彩な方々が出てきた。6番目に出てきたセミの姿をした方が、ハクトさんに話しかけた。
「はぁ、疲れたー。ハクさんよっす!」
「こんちは」
「こちら、新入りさん?」
「そそ。仲良くね」
「へいへい」
「この方、年長の林さん。」
「林だ。前世は人間。今はセミ。よろしく」
「その隣は、橋波さん」
「今は、ショウリョウバッタ。よろしく。」
「あちらの帽子の姿になっているのは、山中さん」
「初めまして。よろしくお願いします」
「その隣のネックレスの方は森下さん」
「よろしく」
「1番最初に出てきた信号機の方がジョニーさん」
「ヨロシク」
「2番目に出てきたウーパールーパーの方は影月さん」
「………」
「すみません。少しシャイな方で。皆さん、この方は新入りの…すみません。まだ名前を…」
「僕はミミズです。よろしくお願いします」
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