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顔合わせ後、ハクトさんはどこかへ行ってしまった。他の方々も散らばって行く。
「よろしく!新入り!」
声をかけてきたのは、セミだった。名前は…忘れてしまった。
「よろしく、お願いします」
「分からないことがあったら、なんでも聞きたまえーなーんてな!ガッハッハッハッハ」
陽気だが、ウザさを感じる。
「引いてますよ。林さん。すみません。ミミズくん?でいいのかな?」
次に話しかけてきたのは、ショウリョウバッタだった。
「すまんすまん!つい嬉しくてなー!」
小さい手で叩いてくる。チクチクして地味に痛い。
「この人、いや、このセミは林さん。ちょっとウザイけどいいセミだから。許してやって」
「ちょっとウザイとはなにをー!?聞き捨てならんな!俺ウザくないよな?な?」
「すみません。うざいです」
「ガーン。はっきり言われると、ショック」
(ガーンとか口に出す所、古くさっ!)
林さんはあからさまに落ち込んでいた。
「す、すみません。初対面なのに、失礼な事言ってしまって」
「いいんだよ。気にしないで。このおじさんが悪いんだから」
(ショウリョウバッタさん、優しい。名前忘れたけど)
「改めまして、僕は橋波です。よろしく。転生して色々大変だったよね。僕もいざなってみると、想像と全然違くて…」
「転生は、夢と希望だ!男のロマンだ!!ガッハッハッハッハ!」
急に元気になる林さん。
「林さん、少し黙ってて下さい」
「橋波ぁぁぁ。お前と言うやつは…はぁ、つまらないやつだなー。もっと明るく行こうぜ!」
「………」
「やめろ!そんな冷ややかな目で俺を見ないでくれ!わかってるよ!50過ぎのおじさんが、セミのぶんざいで何言ってんだって!でも!次の転生が自分でいられる最後のチャンス。例えセミでも、スキルで成り上がる夢を……!!」
「……そうですね。すみません」
優しく微笑むショウリョウバッタ。じゃなくて、橋波さん。
(あ、絶対哀れんでいる)
「ところで新入りー、何歳で死んだんだ?」
「18です」
「若っか!…その、災難だったな」
「いえ、はやり病なので。仕方ありません」
「そっ、か。ま、一緒に頑張ろうぜ」
「ありがとうございます。お2方は、何歳で亡くなられたんですか?」
「俺、58。足場から転落した」
「僕は、37才で」
「お2人は、こちらに来てどれくらいになりますか?」
「俺は8ヶ月」
「僕は、3ヶ月」
「延長、したんですね」
2人は僕の言葉を聞いて、黙り込んでしまった。色々思うところがあるのだろう。少し間を置いて、林さんが口を開く。
「まぁな。虫の寿命なんてたかがしれているが、どうしても、な」
林さんの口調は、寂しげだった。
「…すまん!しらえちまったな!寿命は減ったけど、スキルは結構増えたんだぜ?次地上に出たら何してやろうかと、毎日修行しながら、うずうずしてるぜ!」
「林さん、次、地上に出れるんですか?その前に死ぬのでは?」
と、僕が言うと
「お!言うねぇ、新入り。安心しろ。俺、1年で成虫になれるようになったから!」
ドヤ顔をする林さん。
「8ヶ月って事は…10年でしたっけ?日本のセミはそこまで長く生きていなかったような…」
「チッチッチッ。見たまえ、このつやつやした瞳を」
僕が考え込んでいると
「ポイントは色だよ」
「赤色がどうかしました?」
「日本ではあまり見かけないと思うが、海外では一般的でな。周期ゼミって聞いた事ある?」
「無いです」
「そのセミは、13年または17年に成虫になるんだが、もともと目は白く、その時に赤くなるんだ」
「それが何ですか?」
「俺の寿命、10年払ってもまだあるって事!ガッハッハッ!」
(前置き長っ!)
「林さん、そろそろお昼にしませんか?休憩なくなりますよ」
「おっと、そんな時間か!」
「良かったら、ミミズくんもどうかな?」
「ありがとうございます」
僕は、お二方についてくことにした。
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