1巻 あらすじ

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顔合わせ後、ハクトさんはどこかへ行ってしまった。他の方々も散らばって行く。 「よろしく!新入り!」 声をかけてきたのは、セミだった。名前は…忘れてしまった。 「よろしく、お願いします」 「分からないことがあったら、なんでも聞きたまえーなーんてな!ガッハッハッハッハ」 陽気だが、ウザさを感じる。 「引いてますよ。林さん。すみません。ミミズくん?でいいのかな?」 次に話しかけてきたのは、ショウリョウバッタだった。 「すまんすまん!つい嬉しくてなー!」 小さい手で叩いてくる。チクチクして地味に痛い。 「この人、いや、このセミは林さん。ちょっとウザイけどいいセミだから。許してやって」 「ちょっとウザイとはなにをー!?聞き捨てならんな!俺ウザくないよな?な?」 「すみません。うざいです」 「ガーン。はっきり言われると、ショック」 (ガーンとか口に出す所、古くさっ!) 林さんはあからさまに落ち込んでいた。 「す、すみません。初対面なのに、失礼な事言ってしまって」 「いいんだよ。気にしないで。このおじさんが悪いんだから」 (ショウリョウバッタさん、優しい。名前忘れたけど) 「改めまして、僕は橋波です。よろしく。転生して色々大変だったよね。僕もいざなってみると、想像と全然違くて…」 「転生は、夢と希望だ!男のロマンだ!!ガッハッハッハッハ!」 急に元気になる林さん。 「林さん、少し黙ってて下さい」 「橋波ぁぁぁ。お前と言うやつは…はぁ、つまらないやつだなー。もっと明るく行こうぜ!」 「………」 「やめろ!そんな冷ややかな目で俺を見ないでくれ!わかってるよ!50過ぎのおじさんが、セミのぶんざいで何言ってんだって!でも!次の転生が自分でいられる最後のチャンス。例えセミでも、スキルで成り上がる夢を……!!」 「……そうですね。すみません」 優しく微笑むショウリョウバッタ。じゃなくて、橋波さん。 (あ、絶対哀れんでいる) 「ところで新入りー、何歳で死んだんだ?」 「18です」 「若っか!…その、災難だったな」 「いえ、はやり病なので。仕方ありません」 「そっ、か。ま、一緒に頑張ろうぜ」 「ありがとうございます。お2方は、何歳で亡くなられたんですか?」 「俺、58。足場から転落した」 「僕は、37才で」 「お2人は、こちらに来てどれくらいになりますか?」 「俺は8ヶ月」 「僕は、3ヶ月」 「延長、したんですね」 2人は僕の言葉を聞いて、黙り込んでしまった。色々思うところがあるのだろう。少し間を置いて、林さんが口を開く。 「まぁな。虫の寿命なんてたかがしれているが、どうしても、な」 林さんの口調は、寂しげだった。 「…すまん!しらえちまったな!寿命は減ったけど、スキルは結構増えたんだぜ?次地上に出たら何してやろうかと、毎日修行しながら、うずうずしてるぜ!」 「林さん、次、地上に出れるんですか?その前に死ぬのでは?」 と、僕が言うと 「お!言うねぇ、新入り。安心しろ。俺、1年で成虫になれるようになったから!」 ドヤ顔をする林さん。 「8ヶ月って事は…10年でしたっけ?日本のセミはそこまで長く生きていなかったような…」 「チッチッチッ。見たまえ、このつやつやした瞳を」 僕が考え込んでいると 「ポイントは色だよ」 「赤色がどうかしました?」 「日本ではあまり見かけないと思うが、海外では一般的でな。周期ゼミって聞いた事ある?」 「無いです」 「そのセミは、13年または17年に成虫になるんだが、もともと目は白く、その時に赤くなるんだ」 「それが何ですか?」 「俺の寿命、10年払ってもまだあるって事!ガッハッハッ!」 (前置き長っ!) 「林さん、そろそろお昼にしませんか?休憩なくなりますよ」 「おっと、そんな時間か!」 「良かったら、ミミズくんもどうかな?」 「ありがとうございます」 僕は、お二方についてくことにした。
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