1巻 あらすじ

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「擬態?」 「貴方が今なっている植物は『ドラクラ・シミラ』別命『モンキーオーキッド』。ラン科の植物で、花はキノコに擬態しているそうです」 「キノコですか?猿かと思ってました」 「そう、見えますよね。花粉媒介の為らしいですよ?その香りで、昆虫を呼び寄せるそうです」 「詳しいですね」 「私の仕事は女神様の補佐なので、個人情報は資料として共有されます」 「プライバシーは!?」 「安心してください。あくまで共有されるのは、大まかな概要だけです。しかし、貴方の場合は少し特殊なので、他の人よりは詳しく書いてありました」 「特殊って…。さっきも言っていましたが、僕の身が危ないって、どういう事ですか?」 「実は、人間から植物に転生したのは貴方だけなんです」 「え…」 「大抵人間だった方々は、意思疎通出来そうな者に転生なさいます。個人的意見ですが、ほとんどの人が孤独が苦手という事でしょうか」 「前に、電化製品や衣類になった方もいると聞きましたよ?」 「あくまで、人それぞれですから。余談はこれくらいにして、早くして下さい」 (肝心な事をはぐらかされたような…) 僕は内心モヤモヤしたまま念じた。 (なりたいものーなりたいものー) そんなもので簡単に、変身できるとは正直思っていなかった。でも、期待せずにはいられなかった。 (なれるなら、人に………) 転生して散々な目にあった僕。短期間に色々あって心の余裕なんて無くなった。そんな中、ようやく見つけた希望。異世界らしい日々を送りたいと、切に願う。 『ポフッ』 「…どう、ですか?」 目を開けるのは怖いので、恐る恐る聞いてみる。 「成功です」 僕は、そっと目を開けた。 「えっ!ちょっ!地面近っ!!」 「それはそうですよ。ミミズですから」 鏡を出され、自分の姿を見る。 「うん、僕、ミミズ♪」 (期待した僕が間違っていたのかもしれない) 期待してしまった恥ずかしさと、再びミミズになってしまったショックで、僕がうなだれていると 「元気、出して下さい。他のミミズよりは、目が見えるだけいいじゃないですか」 「あ、本当だ」 言われてみると、転生した時は見えなかった、視界がある。 「一応他の方には、スキル習得で目が見えるようになった、と言ってくださいね」 「他の方?」 「そうですよ?これも聞かされていませんでした?」 「聞いていなかったというか、それぞれだと思っていたので…まさか他の方々との交流があると思っていませんでした」 「はぁ、あの人は…」 補佐の人は呆れた表情をして、話を続けた。 「まず1つ目の部屋で、受付をします。次に、扉が3つあり、どこに行くか案内されます」 「3つの扉ですか」 「詳しい説明は、後ほど話します。その姿では、時間がかかりそうなので、私が案内しましょう」 補佐の人は、そっとしゃがんで、僕の目の前に手を差し出した。 「では、行きましょうか。訓練場へ」
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