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※
◆◆◆
狙うのは依頼主と敵対しているある組織のBOSSだ。
2人は某高級ホテルから出てきたところを狙撃するつもりだが、ワンショットキルでなければならない。
狙うのは無防備な頭だ。
体は防弾チョッキを着用している可能性が高い。
向かい側のビルの屋上から狙う。
カルロスは麻袋からスナイパーライフルを出して手早くコンクリに設置する。
屈み込んでスコープを覗き込んでいると、エントランスからターゲットのBOSSが出てきた。
カルロスは表情ひとつ変えず、躊躇なくBOSSの頭を撃ち抜き、血飛沫が派手に飛び散った。
脳みそも混ざっている。
ホセも即座に後に続いたが、早撃ちの達人なので、瞬きする間もなく護衛を皆殺しにした。
ターゲットを迎えに来た高級車の周りは、血の海と化しているが、運転手がノコノコと降りてきたので、ついでとばかりにカルロスが殺った。
辺りは騒然となり、悲鳴が飛び交ったが、2人は何食わぬ顔で銃をしまい、カモフラージュにギターケースの中に入れる。
これらの作業をほんの数秒で終えた。
2人の出で立ちはその辺にいる真面目な青年といった目立たない格好だ。
髪型も至って普通、どこにでもいる学生のような髪型にしている。
更に、肩には小型の手乗り猿を乗せて姿を眩ませるのだが、猿は2人が飼っているペットで、ずっと2人の仕事に同行してきた。
裏通りに止めた車で現場を離れ、街を出て次の街へ向かう。
目的地に着いたら、まずモーテルを決めて部屋の前に車を止める。
キーを受け取って部屋に入ると、どちらからともなく、深いため息をついた。
荷物と猿を部屋に置いたら、2人で街に繰り出す。
目に付いた酒場の前で足をとめ、カルロスから先に小さな酒場へ入った。
カウンターに肘をついてテキーラを注文し、2人してひと息に煽って気分を一掃する。
その後でテーブル席に座り、適当な食い物を注文した。
この店のオーナーは擦れっ枯らしの女店主だ。
店主は2人を見て、こんな場末の店には不似合いな雰囲気に怪訝な顔をしたが、カルロスの袖口から覗く高級時計に目をとめた。
やがて料理が運ばれてきた。
チリ味の豆と野菜のスープ、乾ききったパン、厚切りのステーキ、それにソーダ水。
酒は食事の後に改めて飲む。
2人は肉を食らい、硬いパンを噛みちぎり、スープを飲み干した。
最後にソーダ水を流し込んだら、『ふう~』とひと息ついて酒を注文する。
すると、女店主は不自然な笑みを浮かべて頷き、一旦店の奥に引っ込んですぐに戻って来た。
急いで注文の酒を2人の前に差し出したが、氷の入ったグラスを満たすのは、琥珀色をしたウイスキーだ。
女店主は面白くもないのにニコニコしている。
しかも、2人のテーブルの傍から離れようとしない。
カルロスはなんとなくわかっていた。
「なんだ、なにか用か」
面倒臭そうに店主に質問する。
「旦那ぁ、うちはこんな店だけど、実はいい子がいるんですよ」
カルロスの読みは当たっていた。
この手の場末の酒場にはありがちな事だが、裏で売春を斡旋しているのだ。
「女はいらねぇ」
ホセはカルロスの不機嫌そうな顔を見て、ニヤついていた。
こういう事は行く先々でままある事だが、カルロスは大抵しかめっ面で断るからだ。
「そう仰らず、2階が部屋になってるんだ、今ね、ちょうど借金のカタで働き出したばかりの娘がいる、まだ殆ど男を経験してない、ねえ、だったら……そちらのお兄さんはどうかしら?」
店主は色目を使い、今度はホセに誘いをかける。
「ああ、悪くない、いくら?」
ホセはカルロスとは違って話に乗った。
「おい、ホセ」
カルロスが眉間に皺を寄せて睨みつけた。
女にうつつを抜かすような余裕はなく、万一そんな時に襲撃されたら事だからだ。
拳銃なら所持しているが、マシンガンをぶっぱなされたりしたら、一瞬で女もろとも蜂の巣になってしまう。
「へへっ、たまにゃいいだろ? 最近女とやってねぇしよ」
2人はここ数ヶ月、遊びを控えていた。
賭博、カジノ、女、これらは常にリスクを伴う為、敢えて避けているのだ。
ただ、ホセがたまには息抜きをしたいと言うのも、わからなくはない。
「わかった、ならお前だけ行ってこい、俺はここで待ってる」
カルロスはホセだけ行かせて、自分は店内で番をする事にした。
「いいのか? 兄貴もやれよ」
ホセは自分だけ楽しむのは悪いと思った。
「いや、いい、お前だけ行ってこい」
けど、カルロスは到底そんな気分にはなれない。
もう何年も殺しをやってきたが、未だに殺った後は後味が悪く、心の奥底に埋まった良心ってやつが痛むからだ。
「じゃあ~、お兄さん、行きましょうか、あたしが案内するわ」
店主はほくほく顔で言ってくる。
「まだ料金を聞いてない、法外なら断わる」
しかし、ホセは金の事を言って、すぐに席を立とうとはしなかった。
「これでいかが?」
店主は指を三本立てて金額を示す。
「ああ、ま、妥当なとこか、わかった、前金で払う」
ホセは納得して財布から金を出し、店主に渡した。
「これはどうも~、じゃ、さっそく」
店主は金を受け取り、上機嫌でホセを案内する。
ホセは店主の案内でカウンターの中に入ると、店主の後について奥の階段を上がって行った。
しけた店で、客はカルロスしかいない。
カルロスはひとりきりになってしまったが、別に気にしてはいなかった。
むしろ、静かでいい。
グラスを傾けながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
こんな静寂が永遠に続けばいいと、本気でそう思った。
それから5分程経っただろうか。
カルロスは不意に不審な気配を感じ取り、手を後ろに回して腰に差した銃を握った。
静けさの中で張り詰めた空気が漂った直後、けたたましい銃声が鳴り響き、店が蜂の巣になる程の銃弾が外から浴びせられた。
カルロスは咄嗟にテーブルの下に身を隠したが、反撃する余裕はなかった。
それほど凄まじい銃撃だったからだ。
銃声を聞きつけ、お楽しみの最中だったホセが女を突き飛ばして適当に服を羽織り、すっ飛んで階段を降りてきた。
「兄貴! 無事か?」
大声で叫んだら、ボロボロになったテーブルの下から片手が覗いた。
「ホセ、やべぇ事になったぞ」
今日殺ったマフィアの子分が、2人に報復しにやって来たに違いない。
小物だと思って侮っていたが、ここまで派手にやるって事は厄介な相手だったと言う事だ。
逃げなきゃマズいが、立ち上がれば蜂の巣になる。
「兄貴、こっちだ、裏から逃げよう」
ホセは階段の陰に身を潜めて言った。
「ああ、わかった」
カルロスは這いつくばって階段へ向かうと、急いで階段を駆け上がり、1階と2階の真ん中にある踊り場で足をとめた。
そこには窓があり、ホセは窓を開けて窓枠に飛び上がった。
「下はゴミ置き場だが、あの上に飛びおりりゃなんとかなる」
カルロスに言うやいなや自分が先に飛び降りた。
ダンッと鈍い音がして、ホセは無事ゴミ置き場の屋根に着地した。
続けざまにカルロスも飛び降りた。
足にビリビリとした衝撃が走ったが、早く逃げなきゃ奴らがくる。
「行こう!」
カルロスはホセに声をかけてゴミ置き場から飛び降りた。
ホセも後に続いたが、2人が街の路地に向かって走っていると、デカい高級車が猛スピードで現れ、2人の真ん前に立ち塞がった。
「ちっ」
カルロスは舌打ちしたが、車からギャング共が降りてきた。
ガタイのいい柄の悪そうな奴が4人いる。
「おい、ちょいと顔を貸して貰おうか」
リーダー格の男が1歩前に歩み出て言った。
片手にマシンガンを握っている。
そいつの周りに控えるギャングも、皆手に銃を握っていた。
「なんの事かな? 僕らは旅をしている最中だ、人違いだろ?」
カルロスはすっとぼけて誤魔化そうとした。
「ほお、ただの旅人が手に銃を握ってるとはな」
リーダー格の男はカルロスの手を見てニヤリと笑う。
「こりゃ、護身用だ」
カルロスは涼しい顔で言った。
「ふっ、ま、とにかく一緒にきて貰うぜ」
だが、リーダー格の男は仲間に目配せする。
「へい」
ギャング達は一斉に2人に襲いかかった。
「やめろ!」
「くそっ!」
「うるせぇな、おとなしくしろ!」
2人は抵抗したが、2、3発殴られて車に乗せられ、縄で後ろ手に拘束された。
◇◇◇
2人が連れて来られたのは豪邸だったが、目隠しをされていたので、2人共どこにやって来たのかわからなかった。
乱暴にこづかれて誰かの部屋に連行された。
「BOSS、連れて参りました」
「ご苦労だった、そいつらはそこの壁に磔にしろ」
「はい」
カルロスはじっと耳を澄ませていたが、BOSSと言われる男の声に聞き覚えがあった。
嫌な予感しかしなかったが、2人共有無を言わさず部屋の壁に磔にされた。
ギャング共は部屋から出て行き、2人とBOSSだけになったが、カルロスはさっきから気になって仕方がなかった。
「あんた、依頼主のパンチョスだな?」
目隠しされているから顔はわからないが、声でそうだと思っていた。
「はっはっ、よくわかったな」
パンチョスはすんなり認めた。
「えっ?」
ホセは驚いて顔をあげ、見えぬ目を凝らした。
「何故だ、俺らに仕事を依頼して、どうして俺らにこんな真似をする、仕事はきっちりやったぞ」
カルロスとホセを拉致したのは、自分達を雇ったマフィアのBOSSだったのだ。
カルロスは意味のわからない仕打ちに憤り、理由を聞いた。
「お前らのようなフリーの殺し屋は信用できねぇ、ただ……腕は確かだと聞いた、だから目障りな奴を始末させたが、なんといってもフリーだからな、いつ自分が殺られるか分からねぇ、野放しにしておくと痛い目に合う」
パンチョスは2人を利用するだけ利用して、危険因子を排除するつもりだった。
「用心の為に、俺らを消すって言うのか」
カルロスは理不尽な裏切りに憤っていた。
「ああ、ま、そうだが……、場合によっては助かる道もある、君ら次第だ」
パンチョスはふっと笑って意味深な事を口にする。
「なんだ、言え」
「君らはまだ若い、カルロスは25、ホセは21……お前らは兄弟だ、調べはついてる、しかも見てくれはその辺にいる学生ときた、俺には趣味があってな、お前らのようなカタギの若い男を性奴にするんだ」
パンチョスには男色のけがあった。
初めは2人を殺るつもりだったのだが、カルロスとホセに会った際、既に2人を性奴にする事を思いついていたのだ。
「冗談言うな!」
カルロスはパンチョスの恥知らずな要求にカッとなって藻掻き、拘束された手足を動かそうとしたが、鎖がジャラジャラ音を立てるだけだった。
「カルロス、おとなしく従えば命は助かる、弟を助けたいとは思わないのか?」
パンチョスはホセの名前を出して迫る。
「兄貴、俺はかまわねぇ、兄貴の好きにしてくれ」
ホセは殺られても構わないと覚悟していた。
「いい体だ、俺のいう事を聞けば……お前らの知らねぇ快楽ってやつを教えてやる」
パンチョスはカルロスのシャツをはだき、胸板を撫で回して言った。
「けっ……!」
カルロスはパンチョスに向かって唾を吐いた。
「っ!……そうか……」
パンチョスは怒りに顔を歪めながら腕で顔を拭ったが、そのままカルロスの顔を殴った。
「ぐっ!」
カルロスはただ殴られるしかなかったが……。
「っの、カスが! ケツの青いガキの癖に生意気な!」
パンチョスは頭に血が上ると抑えがきかなくなる。
身動きできないカルロスの顔を何度も殴り、カルロスは口から血を流した。
「やめろ!兄貴を殴るな!」
ホセは我慢できなくなって叫んだが、パンチョスはやめようとしない。
手加減無しで殴る為、カルロスは気を失いかけている。
このままじゃカルロスは殴り殺されてしまう。
ホセは耐えきれなくなった。
「パンチョス、わかった! 言うことを聞く、だからやめてくれ!」
ホセがカルロスを見殺しに出来る筈がない。
身を挺してでもカルロスを守るつもりだ。
「ん、ホセ、今なんと言った?」
パンチョスは殴るのをやめてホセの前に歩いて行くと、わざとらしく聞き返す。
「いう事を聞く、だから……兄さんを殺さないでくれ」
ホセはカルロスが助かるなら、この際仕方がないと思った。
「そうか、そういう事なら早く言え、ふっ……、ホセ、まずはお前から俺の下僕となるのだ」
パンチョスは目を細めて言った。
強面な顔に不釣り合いな笑みを浮かべ、アンティークの高そうなタンスの所に歩いて行く。
引き出しを開けて中から取り出したのは、薬だった。
個包されたそれを持ってくると、ホセの顔を片手で掴んで口を開かせる。
「あ"……」
目隠しは殴られるうちに取れている。
カルロスは腫れ上がった顔で隣を見た。
「っ、ホセ……、やめろ……パンチョス!」
カルロスは、パンチョスがホセに飲まそうとしている物の正体を知っている。
そして、それを飲んだらどうなるかも、よく知っていた。
「さ、飲め」
「やめろー!」
悔しさと怒りで声を振り絞って叫んだが、パンチョスは白い粉をホセの口の中に入れてしまった。
「ゲフッ……」
ホセは粉でむせて咳き込んだ。
「あーダメだ、ちょっと待て」
パンチョスは急いでテーブルへ行くと、水差しを取ってコップに水を注ぎ、即座に戻ってきた。
「ほら水だ」
「うぐっ」
口の中に水が流し込まれ、ホセは喉につかえていた薬を全て飲み込んでしまった。
「っの野郎……」
カルロスは血が出る程唇を噛み締めたが……。
「まあー、見てるがいい、じきにハイになる」
いくら悔しくても、どうする事もできない。
鉄臭い血の味を味わいながら、為す術もなく、ホセを見守るしかなかった。
数分後、ホセは突然ヘラヘラ笑い出した。
「はははっ、あはははっ」
「ホセ、気分がいいだろう」
「ああ、最高だ」
パンチョスが目隠しを取って問いかけると、ホセはとろんとした目付きで答える。
「ホセ……」
カルロスの脳裏には、これから起こるであろう醜悪な出来事が浮かんでいた。
「ホセ、俺と楽しもう、さあ、外してやる」
パンチョスはホセの拘束を解き、カルロスの目の前で裸に剥いていった。
その間、ホセはヘラヘラ笑いっぱなしだ。
パンチョスはホセを背後から抱き締めてカルロスへ目を向ける。
「カルロス、ホセはこんなに喜んでるぞ、今から用意をしてくるからな、その後でお前にたっぷりと見せてやる」
パンチョスは、ホセが性奴となる様子をカルロスに見せつけるつもりだ。
「この……変態が!」
カルロスは噛み付くように怒鳴ったが、ホセは広い部屋の奥の方へ連れて行かれ、やがて姿が消えていった。
2人が戻ってくるまで、カルロスは怒りに駆られていた。
カルロスもホセも施設で育ったが、ホセは唯一の身内でカルロスにとっては大切な存在だ。
殺し屋なんて命の保証はないが、それでも可能な限り2人で生き長らえるつもりでいた。
それが、まさかこんな事になるとは、想像すらしてなかった。
マフィアの中にはゲイがいるという話を聞いた事があるが、自分やホセがその標的になるとは……予想した事もなかったし、悔しくて堪らなくなり、また唇を噛んでいた。
やがてホセが戻ってきたが、パンチョスと共にバスローブを羽織っている。
パンチョスはソファーをズルズルと引きずってカルロスの前に置くと、真ん中にどっかりと腰をおろした。
「さ、可愛い下僕よ、俺のナニをしゃぶるんだ」
ホセに命じると、ホセはよろけながらパンチョスの隣に座る。
カルロスは見たくもない最悪なシーンを見続けるしかない。
パンチョスがバスローブを開くと、起立したナニが現れた。
ホセは吸い寄せられるようにそれを握った。
「ホセ、やめろ!」
カルロスは嫌悪感と寒気を覚え、ホセに向かって叫んだが、ホセは躊躇なくそれを口に咥え込んだ。
「くっ……」
カルロスは思わず目をそらした。
「そうだ、歯をあてぬようにしゃぶれ」
パンチョスは童顔のホセが自分のを咥える姿に昂り、ホセの体を撫で回している。
「滑らかな肌だ、若いってのはいい、カルロス、見ろ、ホセは美味そうに咥えてるぞ」
ホセは異様に性欲が高まり、自分が女にされたのと同じ事をした。
雄臭い匂いを嗅いだら淫らな気分が増幅し、カルロスの事など眼中に無かった。
「ああ……、いいぞ、ホセ、お前の肉穴を味わいたい、俺に跨がれ」
パンチョスは、カルロスが苦渋に満ちた表情をするのを見ていた。
その顔は加虐心、支配欲、そして何よりも性欲を煽った。
ホセはフラフラと立ち上がり、ソファーに膝を乗せてパンチョスに跨る。
パンチョスは50すぎだが、ギャングのBOSSらしく鍛えられた肉体をしている。
股間から突き出すそれも見事なサイズだ。
そんな物を入れたら体が壊れそうだが、カルロスはホセが汚らわしい行為を強いられる事に腹を立てていた。
「ホセ、目を覚ませ、お前はとんでもない事をしようとしている、やめろ、やめてくれ!」
カルロスは声を振り絞って叫んだが、ホセは腰を落としてパンチョスを迎え入れた。
ローションはパンチョスが浴室で注入している。
そのせいで、立派なイチモツがホセの中にズブズブと入り込んでいった。
「あ、ああっ!」
ホセは初めての経験に喘ぎ声をあげる。
「う"う"ーっ! やめろーっ! このっ……お前は薄汚ぇ悪魔だ! ホセを汚すなー!」
カルロスはおぞましい光景に唸り声を漏らし、額に青筋を立ててパンチョスを罵った。
「ふっ、ふふふっ、なんとでも言え、可愛い弟の尻に俺のナニが突き刺さった、なあホセ、気持ちいいか?」
パンチョスはホセの尻臀を開き、カルロスに見せつけてホセに問いかける。
「ああっ、気持ちいい、兄さん、兄貴ぃ……、気持ちいいよ」
ホセは体を揺らしてカルロスに語りかける。
パンチョスの猛りはホセの体をめいっぱい広げ、我が物顔でホセの体内へ沈んでいく。
「くっ……、ホセ……」
薬のせいだとわかってはいるが、ホセがこんな堕落した行為に没頭するなど、信じたくなかった。
カルロスは歯を食いしばって顔を顰めた。
パンチョスはホセの若々しい肌を舐めまわし、腹の間で揺れる竿を扱いてホセをイカせた。
ホセは女みたいな喘ぎ声を上げて仰け反り、パンチョスはホセを強く突き上げて止まった。
弾け出す快楽に目を細めながら、カルロスに話しかける。
「カルロス、見ろ、ホセはたった今俺の種を受け取った、ああ、よく締まる、ホセ、毎日可愛がってやるからな」
「薬の……せいだ」
カルロスは見ていられなくなり、顔をそらして吐き捨てるように言った。
パンチョスはホセの中に好きなだけ放った後、ホセをソファーに座らせた。
「っ……」
カルロスはホセの惚けた顔を見て、居た堪れない気持ちになった。
しかし、パンチョスはカルロスも抱くつもりだ。
パンチョスは再び薬をとりに行ったが、個包ではなくポンプを持ってきた。
「や、やめろ……」
カルロスはホセのようになりたくなかった。
激しく拒絶したが、磔された状態じゃどうにもならない。
腕に針が刺さって薬が注入された。
「ふっ、これで迷いも何もかもなくなる」
パンチョスはほくそ笑んだが、注射は効き目が早く、異変はすぐに表れた。
笑いたくないのに笑える。
バカみたいに気分がいい。
カルロスがヘラヘラ笑いだすと、パンチョスは拘束を解いてカルロスを浴室に連れて行った。
カルロスは我が身に何が起こっているのかわからなかった。
ただ、体を触られると気持ちいい。
部屋に連れ戻され、パンチョスは2人をベッドに連れて行った。
ベッドの上で繰り広げられたのは、日頃カルロスが禁忌に思う行為だ。
パンチョスは2人を四つん這いにして並べ、2つの尻を交互に突いた。
「あっ、うあっ」
「んっ、兄さん」
2人は手を繋いで悶える。
パンチョスは初々しい肉体を汚し、兄弟の体を交互に存分に味わった。
「お前らは運がいい、この俺に気に入られりゃ、気持ちいい事をして遊び暮らせるんだからな」
ホセとカルロスそれぞれに種を注ぎ終わり、すっきりしたところで2人に69をやらせた。
薬でイカレた2人は、互いのナニをしゃぶり、淫らな行為にのめり込んでいった。
数時間後、薬が抜けた。
2人は檻に入れられている。
頭が割れそうに痛く、互いに真っ裸なのにそれどころじゃなかった。
パンチョスにとって、2人はあくまでも性奴だ。
だから、檻に入れて飼育する。
監禁生活がスタートした。
命を奪われないだけマシかもしれないが、歯向かえば薬を使われる。
パンチョスは気が向けばやってきて、2人に淫行を強いる。
ホセは従順に従って逃げる機会を待つつもりでいたが、カルロスはどこまでも抗った。
しかし、歯向かえば薬を使われる為、体がボロボロになっていく。
「兄貴、今は従った方がいい、このままじゃ中毒で死んでしまう、兄さん、従えばパンチョスは薬を使わない、頼むから……上辺だけでいいから従ってくれ」
ホセは必死の思いでカルロスに頼んだ。
「ああ、だな……」
カルロスは日々体が弱るのを感じ、力なく頷いた。
確かに、このままじゃ逃げるどころか、自分は本当に死んでしまう。
ただ、パンチョスに弄ばれる事だけは許容できない。
自分らをただの駒として利用した事が許せなかった。
「ホセ、お前は可愛い弟だ、ずっと一緒にいてやりてぇ、けど、俺はあんな事を……、みっともねぇし、パンチョスは許せねぇ」
カルロスは生きてはいたかったが、こんな惨めな事になってしまい、自暴自棄になりかけていた。
「馬鹿な、生きていればやり直せる、お願いだ、兄さん、しっかりしてくれ」
ホセは目に涙を浮かべると、カルロスを抱きしめてキスをした。
薬でハイになっている時を除き、兄弟でそういう行為をした事は一切なかったが、ホセは胸がいっぱいになって衝動的にやっていた。
カルロスはホセを拒絶しなかった。
こんな事をするのは異常だとわかっちゃいるが……ホセは目に涙をいっぱい溜めて訴える。
ホセのことが今まで以上に愛おしく思えた。
だから……自然とホセを受け入れていた。
カルロスの精神は極限まで追い込まれていたが、極限状態に追い込まれた事で、ホセに対して特別な感情が芽生え始めた。
その後、2人はごく自然に愛し合った。
パンチョスの居ない間に、檻の中で抱き合って求め合う。
カルロスはホセとひとつになり、薬など無くても最高に気持ちよく感じた。
快楽と共に心に抱く重荷が剥がれ落ちていき、自暴自棄になりかけた気持ちが、前向きな方向へ傾いていった。
2人が愛し合った後、カルロスは変わった。
薬無しでパンチョスに従い、命じられるままに淫らに振る舞う。
パンチョスに屈したわけではなく、愛するホセの為に生きる道を選択したからだ。
2人はパンチョスの性奴を演じながら、虎視眈々と脱走する機会をうかがっていた。
そしてある日、パンチョスはすっかり従順になった2人を外に連れ出した。
行先も告げずに車を出し、2時間ほど走ってある屋敷に辿り着いた。
2人はパンチョスとその子分に連れられて屋敷に入った。
沢山ある部屋のひとつに通されたが、部屋の中には高そうな骨董品や高級家具が置かれている。
その部屋で出迎えた男は、一見してマフィアだとわかる風貌をしていた。
パンチョスはその男と親しげに話をしていたが、カルロスはそれとなく部屋の中を見回し、アンティークのテーブルへ目がとまった。
そこには銃が置かれている。
不用意に銃が置いてある事を疑問に思ったが、そうするうちにパンチョスは話を終えた。
「じゃ、俺は適当に迎えにくる」
2人はこの男に売られたのだが、パンチョスはこの先2人を売って金を稼がせるつもりでいた。
パンチョスがいなくなると、男は顎に手をやって2人を見た。
「お前らは奴に飼われてるんだってな」
「はい」
不躾な質問にはホセが答えた。
「ふっ、悪くねぇ」
男は2人を気に入り、下卑た笑みを浮かべて呟いた。
その後、2人は男と淫行をする羽目になったが、男はサディストだった。
鞭を手にして、裸の2人を打って楽しむ。
カルロスは歯を食いしばって痛みに耐えたが、ホセは悲痛な声で許しを乞う。
「ひっ、痛い、どうか、許してください」
「へっへ、いいぞ、もっと泣かせてやる」
男はホセの泣きそうな面を見て昂り、堪らなくなって正常位で事に及んだ。
「うっ、あっ、ああっ!」
激しく揺れるベッド、ホセは大袈裟な位顔を歪めて喘いだが、実はカルロスと同様に銃の存在に気づいていた。
「ふははっ、たまらん、体が壊れるほど突いてやる」
男は高笑いすると、太い腰を揺らして乱暴に突き上げたが、いい反応を見せるホセに夢中になり、カルロスの事は放ったらかしになっていた。
カルロスは男の様子をじっとうかがっていたが、静かに銃を取りに行き、弾が装填済みなのを確認した直後に……男の頭を撃ち抜いた。
男は『グッ!』と蛙が潰れたような声で呻き、血飛沫を上げてベッドに倒れ込んだ。
不用心に銃を出していたのは間抜けだが、この男は銃のコレクターだったので、仕入れた銃を見ていた時にちょうどパンチョスがやって来た。
それで何気なく銃をテーブルに置いたのだ。
男はカルロスとホセの話をパンチョスから事前に聞いていたが、いざ2人を目の前にして、自分の好みだった事で昂った。
うっかり銃の事を忘れてしまい、そのまま行為に夢中になった。
男にとっては凡ミスが招いた最悪な事態となったが、カルロスとホセにとっては万に一つもないチャンスだ。
運が2人に味方したとしか言いようがない。
2人は銃声を聞きつけた手下がかけつけてくる前に、2人で手分けして他の銃を探した。
コレクターだけに銃はすぐに見つかり、2人はそれぞれに銃を手にして素早く服を着た。
その時、手下がドアをバンッ!と乱暴に開けて入ってきた。
乾いた音が連続して響き、数人いた手下は次々と倒れた。
撃ったのはホセだ。
性奴に堕ちていても、早撃ちの腕は落ちてはいなかった。
2人は窓から逃げ出した。
直ぐに別の手下が追ってきたが、銃弾を躱しながら敷地に止められた車に乗り込んだ。
運良くキーがついたままだったので、カルロスが向かい来る手下を撃ち抜き、何人か倒したところでホセが車を急発進させた。
タイヤを鳴らして派手にターンし、思いっきりアクセルを踏み込む。
車は土煙をあげながら屋敷から離れた。
だが、敵もそう簡単には諦めない。
手下は車で追って来たが、ここで振り切らねば、せっかく得たチャンスがふいになる。
カルロスは危険を承知で窓から身を乗り出し、追ってくる車のタイヤを狙って撃った。
手下の車はパンクして滑るように横へそれ、転がるように派手に横転した。
2人は無事逃げ切った。
逃げ切ってある場所に辿り着いた。
荒野にひっそりと佇む教会。
車から降りて中に入れば、神父がカルロスをハグして出迎える。
「おかえり、神の子よ」
「ああ、ただいま」
カルロスは赤子の時に、この教会に捨てられていたのだ。
「そちらは?」
神父はホセを見て聞いた。
「弟のホセだ」
「おお、兄弟がいたのか、巡り会えたんだな?」
「ああ、ホセも施設で育ったが、別の施設だ、施設を出た後に偶然出会った、で、色々話をしているうちに兄弟だとわかった」
カルロスは簡単に説明したが、内心焦っていた。
パンチョスに連絡がいってる筈だから、早いとこ雲隠れした方がいい。
その為にここへやってきた。
「そうか、神のお導きだ、よかった」
神父は顔を綻ばせて喜んだが、ゆっくり話してる暇はない。
「悪ぃが俺達は追われてる、神父さん、あれを」
カルロスは真顔で神父に言った。
「ああ、そうか、カルロス……私は何も言わぬ、ただ君の無事を祈っている、ちょっと待ちなさい」
神父はわかっていたように頷き、祭壇の奥へ歩いて行った。
それからすぐに戻ってくると、スーツケースとボストンバッグをカルロスに渡した。
「カルロス、さ、持って行きなさい」
「ありがとう、神父さん、また必ずくる」
カルロスはそれらを両手で持つと、神父に別れを告げた。
「ああ、カルロス、それに弟のホセ君も、君達に神の御加護を」
神父が神に祈りを捧げると、2人は扉を開けて足早に教会を出て行った。
神父はそんな2人を、優しげな眼差しでいつまでも見送っていた。
できるだけパンチョスの手が届かない所へ……。
日はとっくに暮れているが、車のライトを頼りに真っ暗な道をひたすら走った。
街を2つ通り過ぎ、3つ目の街に辿り着いた時に、ホセは年季の入ったモーテルの前で車をとめた。
「兄貴、どうする? 泊まる?」
「いや、車の中でいい」
「そうか、わかった、でもさ、よく考えたよな、教会に隠すとは」
ホセはニヤついた顔で言った。
「ああ、万一の備えはしてある、いつどうなるかわからないからな」
カルロスは眠そうな目をして答えたが、ボストンバッグには札束、スーツケースにはスナイパーライフル、小銃、マシンガンなどが入っている。
「兄さん、寝ていいよ、俺が見張るから」
ホセは窓を開け、夜風に当たりながら言った。
「そうか? わりぃな」
カルロスは酷く疲れていたので、有難くホセの言葉に甘える事にした。
「へへっ」
ホセは照れ笑いで返す。
今は何よりも、カルロスと共に逃げ出せた事が嬉しかった。
もしカルロスが自暴自棄になったままだったら、今頃は薬で人生終了って事になっていただろう。
プライドよりも、生きる事を選んでくれてよかった。
◇◇◇
翌朝、2人は小さな商店に立ち寄って朝飯を調達した。
目立たない場所に車を止め、2人してベーグルサンドにがっつき、炭酸水で流し込む。
「そういえば……猿は死んだだろうな」
ホセはふとペットの猿の事を思い出した。
あの時はあのまま置き去りにするしかなかった。
「ああ、ま、仕方ねぇ、こっちが死にそうだったからな」
カルロスは返事を返し、具がたっぷり入ったベーグルにかぶりついた。
「なあ兄さん、これからどうする?」
ホセはこれからの事が心配だった。
「そうだな、パンチョスは殺し屋を雇って俺らを狙うだろう、国境を超えてこの国を出る」
カルロスは国を捨てて他国へ逃亡するつもりだ。
「密入国?」
「ああ」
「いけるかな?」
国境には警備兵がいて、密入国する者を捕え、母国に強制送還する。
ホセは不安に駆られた。
「ここにいたらどのみち死ぬ、この国はあいつの息がかかった組織ばっかしだ、逃げると言っても限界がある、これを食ったら出発しよう、あと小一時間も走りゃ国境だ」
カルロスはここにとどまって、日々怯えて暮らすのはごめんだった。
「わかった、俺は兄さん、あんたについて行く」
ホセは納得して頷き、片手を伸ばしてカルロスの手を優しく包んだ。
「あいつのせいで妙な事になったが、ホセ、俺はお前の事を……」
カルロスは何か言いかけてやめてしまった。
「ああ、神を裏切る行為だ、でも……俺らはとっくの昔に裏切ってる、俺がこの世で信じるのは、兄さんだけだ」
ホセにはカルロスが言おうとした事が伝わっていた。
地の果てまでカルロスについて行こうと思っている。
「そうか……、ホセ、これからもよろしく頼む」
カルロスは握られた手を握り返し、気持ちを一新してホセに言った。
生か死か紙一重の人生だが、今は今までとは違う。
本当の意味でのパートナーとして頼んでいた。
「こちらこそ、よろしく……、兄さん、カルロス……愛してる」
ホセは湧き上がる想いを率直にぶつけた。
「その……、ああ、俺もだ」
カルロスは酷く照れ臭かったが、ホセの思いを受け取った。
それから後、2人はすぐに出発した。
荒れ果てた赤茶色の大地。
太陽に焼かれてカラカラに乾き切った空気。
砂塵が舞う殺風景な荒野の中を……。
土埃に塗れた1台の高級車が走り抜けて行った。
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