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何処を歩いているのかも分からなくなったとき、上空に現れた戦闘機から、バリバリっとけたたましく落とされた焼夷弾で、ひいおばあちゃんは倒れ動けなくなった。暫くして火の粉が飛交って、背中の風呂敷にも飛び火してきた。
ひいおばあちゃんは無我夢中で火の粉を払い、背中の化粧箱を守った。
化粧箱は少し焦げただけだと思っていたが、よく見ると化粧箱の横に、小さな穴が空いていて左右に貫通していた。
ひいおばあちゃんは、この時ひいおじいちゃんの化粧箱が、ひいおばあちゃんの背中の代わりに弾丸を受けてくれて、生きられたと思った。
それからは、守ってくれたひいおじいちゃんの化粧箱は、ひいおばあちゃんの大事なお守りになった。
戦争が終わって半年して、ひいおじいちゃんが無事帰って来てくれた。ひいおばあちゃんは泣いて喜んだ。
そして、ひいおばあちゃんが化粧箱の話をした時、同じ時期にひいおじいちゃんは、パラオっていう日本兵が全滅した場所で、奇跡的に生きて帰って来れたのは、銃弾に足を撃たれて歩けなくなったとき、何処からかひいおばあちゃんの声が聞こえて来て、その方向へ歩いて行ったら助かったと話をした。
ひいおじいちゃんの足には、その時の穴の窪みがあった。
二人の想いが其々を守った。
それからは、大事な化粧箱は、代々受け継がれている。
しかし、不思議なお話はこれだけではなかった。
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