鬱陶しい雨

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鬱陶しい雨

ジメジメした梅雨は嫌い。 朝、勢いよく玄関のドアを開けた途端、ポツポツ小雨が降っていた。 「お母さん! 傘! 何処?」 「何言ってるの? あんた、この間買ったばかりの黄色い傘あるでしょ?」 確かに先日母親に、なんでこんな幼稚園児みたいな色を買ってきたのかと、呆れられたお気に入りの傘を買った記憶はあるが…今はここには無い。 雨の日の暗いイメージが嫌で、太陽の輝きのようなシャイニングイエローの傘。雨の日の気分を一新しようと買った傘だったが… 「この間の雨で、電車に置き忘れたって言ったでしょ!」 「はぁ~? 一体何本電車に置いてくれば気が済むの? そこに、お父さんの余っている紺色の傘があるでしょ。それ持って行きなさい」 「えっ〜、こんなのぉ~? いらない! もういいっ!」 バタンッ! とドアを閉めて学校へと走って向かうが、徐々に雨音が大きくなり勢いを増してきた。 背負っていたリュックを頭に乗せて、雨をしのごうと走ったが、いつもは歩いて20分の道のりもままならなくなり、5分ほどでgive up。 フランス人は、雨が降っても傘を持たないって聞いたけど、こんな雨のときはどうするんだろう? テレビで言っていたことをふと思いだしながら、近くのまだ開いてないコ―ヒ―ショップの軒下で雨宿りをすることにした。 ここは通学路。誰か知り合いが通るはずと、友人を探す私。早川 翼(はやかわ つばさ)中学3年生。 あたりを見回してしていると、頭上に1本の傘がかざされた。 ネイビーの傘。誰?
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