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進路
席についてリュックから教科書を出しながら、窓の外を見ると、大きなポプラの葉からキラキラ光る雨の雫がポトポト落ちている。
その先には、さっきまで切れ間から覗いていた青空が、空いっぱいに広がっていた。
鮮やかなスカイブルー!
何だか幸せな一日になりそうだ。
そうだ、雨傘買わなくちゃ!
隣の席の遥に
「ネイビーと合う色って何色かな?」
「ネイビーって? 濃紺のことだよね? それなら、何でも合うんじゃない。普通だし…」
翼はムキになって
「違うの! 紺色じゃなくて、ネイビー!」
「えぇ〜? 違いがわからないけど、黄色とか白」
「黄色はダメ、幼稚って言われたし、白は地味かな?」
ふと空を見上げると、そこに広がる青空に
「スカイブルー! これだ! 絶対合う!」
私の頭の中は、しとしと降る小雨の下で、ネイビーの雨傘とスカイブルーの雨傘が並んで、歩く姿が浮かんでいた。
呆れ顔の遥かに誇らしげに
「ネイビーとスカイブルーの2つの雨傘で、雨の日のデートって素敵じゃない」
「さあ~、雨の日ねえ~。私は天気の良い日にデートしたいわ」
と無下もなく即答された。
翼は、もう一度彼に会って話をしてみたい。名前も聞かずに別れたことを今更ながらに酷く後悔した。
それからは、授業そっちのけで、一日中、彼と会う方法を模索していたが、どう考えても良い方法が浮かばず、とりあえず、今日と同じ時間、同じ場所で待ってみようと、それから1週間コ―ヒ―ショップの軒下に立ってみた。
それを見ていた遥は
「ねぇ~、本当に隣の高校の生徒?」
「だって? 僕の高校の前って確かに言ったんだよ」
「だったら、高校の校門の前で待ってみたら?」
「でも、名前も知らないのに校門で待ち伏せしたら、おかしな子だと学校に通報されちゃうよ」
「まぁねえ〜、そんなとこがオチだよね」
翼は、はっと閃いた。
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