涙よ届け

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そこから付き合いが始まり、早くに結婚した。 その日々のあいだ、母は様々な涙を流した。 もちろん涙は出産されたときの産声の涙から始まっていた。 その巡る日々の中での、成長までの涙。 バスケができなくなった絶望の涙。 父のステージに感動した涙 お腹に命の宿った喜びの涙。 父側に結婚を反対された残念さの涙。 周囲に助けられたありがたさの涙。 子育てで疲れ果てた苦労の涙。 僕が言うことをきく素直な子になった感激の涙。 父とのケンカの涙。 それから......。 癌が発覚したときの涙。 そこには。 『美幸』としての涙。 『母』としての涙。 『妻』としての涙。 それから......父と僕と3人の、壮絶で温かい涙にあふれていた。
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