涙よ届け

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帰宅すると、父がリビングのソファーで横になって眠っていた。 センターテーブルに置かれた灰皿にタバコの吸い殻の山がある。 「おい、起きろよ!なにしてんだよ! 母さんに遠慮が無くなってから、吸い過ぎだぞ! それから、そんなところで寝て風邪とかひくな!」 父が火がついたように飛び起きた。 「あ、え、あ、あれ?え?」 寝惚けた父が辺りを見回し、僕を見て後ずさりしようとして ソファーから転げそうになった。 「大事なおつかいさせといて、呑気に寝るなよっ!」 僕は浅葱さんが包装してくれた、小さな箱を突き出した。 「miyuki8331」 「え?」 「パスワード、お母さんの誕生日の8月31日。 明日だね、ケーキを買ってお祝いしようよ」 「正美......」
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