-1- 出会い

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行き交う人々は女性が悩んでいても声を掛けず素通り、気づいても知らぬふりをしている。人を助けるといつか自分に返ってくるってお婆ちゃんがよく言っていた。お婆ちゃんの言葉通り自分のできる範囲で困ってる人は助けるようにしていた。 「ありがとうございます。××駅まで行きたんですけどよく分からなくて‥」 人混みで溢れ雑音が酷いのに透き通る声。いい声だなーこのお姉さん。Vtuberになれそう。なんて思いながら駅までの料金と乗り換えの有無を確認する。 「えぇっと、300円ですね。乗り換えもなしで一本で行けるみたいです」 「そうなんですね。ありがとうございます」 軽くお辞儀をされ発券機の方に歩いて行った。発券機でチャージをし終わると先ほど悩んでいた女性は発券機の前で佇んで首を傾げている。 「どうしました?」 「あの‥、切符はどうやって買うんですか?」 え?切符の買い方を知らない?? 不思議に思いながらも切符の購入方法を教え切符が出てくると物珍しそうに眺めていた。 まさかこのお姉さん‥ 「あの電車初めてですか?」 「えぇ、そうなんです。普段はずっと車移動で」 先ほどから佇まいや仕草、口調全て上品に感じる。多分このお姉さんはお金持ちなんだろう。見た目的にたぶん20代、それで切符の買い方を知らないなんてお金持ちの箱入りのお嬢様しか考えられない。 「良かったらその駅までお送りしますよ」 「それは申し訳ないです‥お手数をおかけしてしまいますし」 「大丈夫です。この後予定ありませんから!良かったら一緒に行きましょう」 お姉さんは少し悩んだ末に軽くお辞儀をした。その姿勢はとても綺麗で私なんかが到底できない、お手本のようなお辞儀だった。 「ありがとうございます。よろしくお願いします」 初めての電車ならこの後改札を通って目的の駅まで行くなんて至難の業だろう。送ってあげるのが1番いいと思った。ここで送って行かなかったら気が気じゃないだろうし家に帰っても好きな動画配信者を見たりゲームするだけ。なら人助けをした方が後々の事も考えると気分もいいと思った。 なのに、 どうしてこうなったんだろう。
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