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「一歌さん好きです」
唇を重ねられ触れるだけの口づけ。温かく柔らかい感触。ファーストキスはまさかの女の人で、漫画とかではレモンの味なんて云うけれどレモンの甘酸っぱさじゃない、もっと甘くてまるで蜜みたいだった。
同性なのに嫌だと思ってない自分がいることに困惑する。自分は異性が好きだったはずだ。今まで実ってはいないが好きになった人は男性ばかり。嫌悪感を抱かないむしろ‥気持ちよくて甘い口づけに落ちていく。
「‥っ、だめ、ですっ‥」
欲に負けないように否定の言葉を紡ぐが久方さんは関係なく唇を塞いでくる。「好きです」「可愛い」と甘い言葉を紡がれ言葉でも刺激されていく。
触れるだけの口づけから不意にヌルッとした感触が口内に侵入する。
「‥っんぅ」
生温かいものが舌に絡みつき、上擦った声が隙間から漏れる。
なにこれ‥舌?
初めての刺激と快感に戸惑ってしまう。お酒の熱に浮かされてなんだか気持ちいい。舌を絡め取られ歯列をなぞられる。時たますごく気持ちのいい箇所がありその度に自分の声じゃないような甘い声が漏れてしまう。
‥ッ‥まって‥、これ‥きもちいい。
長い口づけ、初めての口づけで上手く息遣いができない。苦しいのに気持ちよくてもっと欲しくなる。
唇を離され銀色の糸が繋がっていたがすぐに途切れ私の唇に落ちた。久方さんの少し冷えた指の腹が唇をなぞり頬に首筋へと這わさ身体が震える。
「‥んっ‥、」
お酒に浮かされ朦朧とした頭では正常な判断ができない。気持ちよくて、もっと欲しいと欲望が渇望する。これ以上は本当に取り返しがつかなくなる。自分を苛ませ離れようと体に力を入れると唇を塞がれ口内に舌が侵入する。
「‥‥っん‥、‥ふっぁ‥」
先ほどのキスと違い犯すような口づけに思考が溶かされ力も抜けていく。ダメなのに拒否しないといけないのに気持ち良すぎて拒めない。軽い電撃のような刺激は身体に響き渡り快感になってとても気持ちいい。クチュグチュと舌同士が絡み合い厭らしい水音が聞こえそれすら快感に変わる。唾液が重力に伴って唇の端に垂れ息がうまくできず少し苦しい。
離れてもすぐに絡め取られ永遠に思えるような長い口づけに気持ちいいことしか考えられなくなる。求めるように舌を絡ませていると唾液を口内に押し込まれ喉を鳴らしながら飲み込むと久方さんはようやく唇を離してくれた。
乱れた息を整えながら虚ろな瞳で久方さんを見つめているとストールを取り払い結んでいた髪を解いた。サラサラと髪が靡き薄い笑みを浮かべているその姿はとても綺麗で妖艶だった。
「とっても可愛いです。一歌さん」
「‥ひ‥さかたさん」
久方さんに手を伸ばすと指を絡め取られソファーに押さえつけられる。耳元で誘惑するような甘い声で「花織と呼んでください」と囁かれる。その声は聴覚さえ犯すほど色っぽく刺激が強すぎる。
「‥‥か‥おり‥っん!」
言い終わる前に耳を舐められ言葉が途切れる。耳の中も執拗に舐められ厭らしい水音がダイレクトに聞こえおかしくなりそうだった。唇の時より快感が強く声が抑えられない。
「ひゃぁ‥、ぁっ、‥」
快感から逃れようとしても頬に手を添えられ逃れる術はなかった。首筋をなぞられただけで身体がぴくりッと反応してしまう。
「敏感なんですね」
「‥はぁ‥っ‥かおりさん‥」
「とっても綺麗。もっと私だけに見せてください」
うっとりとした恍惚とした表情に息を呑み身震いする。
あぁ、まずい気がする。
私の勘が〝危険〟だと言っている。
でも、わかっていても拒むことができそうになかった。
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