振られてばかり

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振られてばかり

人は「男と女」とは別に「α.β.Ω(アルファ.ベータ.オメガ)」と言う三つの性に別れている。 人口の大多数がβ性の人間であるのに対し、一部のα性の人間が権力や権威を握っているのが現実だ。 αは容姿端麗、頭脳明晰で優れた身体能力を持っている者が多い。 そしてΩ性は三ヶ月に一度ヒートと呼ばれる発情期が起こり、その期間特定の番が居ないΩは身体から発するフェロモンでαを誘い、心身共に掻き乱す事になる。 僕の名前は広森 獅将(ひろもりしおん)、年齢24歳、Ω。 今日俺は彼に告白する。 彼は大学の先輩で26歳、勿論彼はαだ。 優しく面倒見が良く優秀で何といっても俺を気に入ってくれている・・・・・と思う。 待ち合わせのカフェに行くと彼はすでに俺を待っていた。 「先輩、遅れてすみません」 「構わないよ、私も今来たばかりだ」 「先輩、今日はお話があって・・・・・」 「話って?」 「よかったら俺と付き合ってください」 「付き合うって、それはどうゆう意味で言ってる?もし、恋人になってほしいと思って言ってるのなら、お断りする」 「どうしてですか?先輩も俺の事好きですよね。それとも俺の思い違いですか?」 「もちろん君の事は好きだよ、でもそれは可愛い後輩としてで恋人にはなれないな」 「なぜですか?」 「君はΩなのに、αの僕よりずっと優秀で背も高いし目立つ、そんな君を恋人として連れて歩く気にはなれない。 誰が見たって君の方がαに見えるだろ。 友達なら自慢できても、恋人として自分が劣等感を感じるのは嫌なんだ。 だからごめん」 「そうですか・・・・・わかりました」 同じ理由で振られたのはこれが初めてではない、いつもそうだった。 元来Ωは細くて幼い感じがして、色白で可愛いと思われているし、そうゆうΩならだれからも好かれている。 だが俺はどうゆうわけか、背が高く成績も優秀で見た目もいい、そのおかげでいつもαだと思われ、Ωだと分かると敬遠される。 そのおかげで未だに理想の恋人に逢えず、Ωの俺を好きになってくれる人は何処にもいなかった。 俺は優秀なαの恋人がほしいのに、言い寄る奴はすべてΩばかり・・・・・確かにΩにはよくモテる。 だがΩ同士で恋人になっても何の意味もない・・・・・ 俺だって好きでこの容姿になったわけじゃない、両親はどっちもαだし、当然自分もαだろうと思っていた。 何より見た目も中身もどう見てもαだし、両親ともαなのに、どうして自分がΩなのか理解できない。 何度調べても結果は同じだった・・・・・ 別にΩを嫌だと思っているわけではないが、だったらΩらしい外見に生まれたかった。 こんな自分を好きになってくれるαが居るのだろうか? 失恋の傷は新しい恋で癒されると言うが、新しい恋はほんとうにできるのだろうか・・・・・ 小学5年生で始めて発情期がきた時、母に何処へも行くなと部屋に閉じ込められた。 学校へも行けず、ただ意味も分からないまま部屋の中で自分の熱くなる身体を持て余す毎日を過ごしていた。 発情期の何かもまだ知らず、両親も早すぎる身体の変化に戸惑うばかりだった。 その日、母は仕事で外出していた、閉じ込められた部屋で一人過ごしていると、玄関のチャイムが鳴るのが聞こえた。 部屋から出ることはできないが、窓から外をのぞくことはできた。 窓から見ると、玄関ドアの前に仲のいい友達月迫 怜(つきさこ れい)が立っていた。 彼が来てくれたことが嬉しくて、窓から身を乗り出して彼の名前を呼んだ。 「(れい)、ここだよ」 「獅将(しおん)、どうして学校へ来ないんだ?」 「ママが行くなって、出られない」 「待ってろ」 怜はそう言うと、窓の外の大きな木をよじ登って僕の部屋に入ってきた。 怜は部屋に入ると、学校でのことや友達の事を話してくれた。 そのうち怜が変なことを言い出した。 「獅将いい匂いがする」 「そう?・・・・・」 (れい)は部屋の中を歩き回り、あちこち匂いの原因を探した。 そして俺のそばまで来ると、急に俺の身体にのしかかった。 「怜、どうした?」 「獅将、しおん・・・・・」 怜は俺を抱きしめ、鼻を擦りつけて匂いを嗅ぐと、息を弾ませその腕に力を込めて更に強く抱き着いた。 なぜ怜がそうなったのか、今ならわかる・・・・・
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