決行

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決行

そして今夜、怜と二人だけで決行することにした。 約束の時間は21時、軽く食事を摂りシャワーを済ませ怜の訪れを待った。 玄関のチャイムが鳴り、鍵を開けてソファへ移動した。 「獅将(しおん)・・・・・逢いたかった」 「(れい)男らしくなったな。この前は気が付かなかったが、逢えて嬉しいよ」 「ソファに座ったら俺の身体に触れてくれ、それで拒否反応が起こるはずだ」 「わかった。絶対、俺を認めさせてやる」 怜が俺の隣に座った。 身体が触れた瞬間、全身が震え出した。 激しい頭痛と嘔吐感で背中を冷たい汗が流れた、怜が震える身体を抱きしめた。 それでも身体は震え、用意した洗面器に嘔吐を繰り返す、タオルを手にした怜が背中をさすりペットボトルの水を差しだした、口を漱ぎタオルで零れた水を拭いてくれる。 激しい嘔吐に胃の中からは黄色い液体しか出なくなっていた、それでも収まらな嘔吐に涙が滲み悪寒に身体が震えていた。 怜は俺の身体を抱きしめたまま、囁き続けた。 「獅将、俺が居る俺がそばにいる。これからはずっとお前のそばから離れない、だから俺を認めてくれ、許してくれ。獅将(しおん)・・・・・」 怜の声は耳に優しく響き、胸の中にしみわたる冷たい水のように俺の心を潤した。 嘔吐の収まりと共に頭痛も身体の震えも消えていた。 「獅将(しおん)・・・・・」 「(れい)、もう大丈夫。お前に触れても何ともなくなった」 「獅将(しおん)」 怜の身体が触れているのに、俺の身体は怜を拒否しなくなっていた。 怜を見つめる目にじわりと涙が滲んでくるのが分かった。 怜の手が俺の頬に触れた瞬間、溢れた涙が零れ落ちた。 「獅将(しおん)、よかった」 「(れい)、逢いたかった。お前の事好きだったんだ」 怜が壊れ物を抱くように、そっと抱き締めた。 「獅将、キスしていいか?」 「待て!うがい・・・・・口洗ってくる・・・・・」 「吐いたからか?そんなこと気にすると思うか?」 「俺が気にするんだよ」 (れい)との初めてのキスを、このままする訳にはいかない。 ペットボトルの水で口を漱ぎ、怜の唇に優しいキスをした。 「獅将(しおん)お前小学生か?」 「どうゆう意味だよ?」 「そんなキスで満足かって言ってるんだよ」 「分かった、俺流でやってやる」 怜の顔を両手で挟み、噛みつくように唇を貪った。 激しいキスに息が止まるほどの快感が押し寄せる、これまで何度もキスはしたがこんなキスは始めてだった。 全身の血が逆流するような激情と興奮に頭の中で火花が散った。 下半身は見事に勃ちあがり、硬くなっていた。 熱く脈打つペニスは怜を求めて蠢きだす。 怜が腰を抱き、自分の股間を擦りつける、怜のそれも同じように熱く硬く勃起していた。 (れい)にキスされ抱き締められただけで、身体中が燃えるように熱くなった。 発情期まではまだ3日ほど余裕があったはずなのに、どう見てもヒート状態と同じ感じだった。 「獅将(しおん)、お前発情期か?」 「違う、まだ3日もある・・・・・」 「それにしてはこの匂い……お前が初めて発情期を迎えた時と同じ匂いだ。あの時、俺は生まれて初めてオメガのフェロモンを知ったんだ。今日まであれほどの匂いを感じたことが無い。お前のフェロモンだけが俺をとらえて離さない。 獅将(しおん)、俺たちきっと運命の番だと思わないか?」 「(れい)、お前は俺でいいのか?」 「勿論だ、発情期が来たらお前と咬合しよう。いいな!」 「うん・・・・・(れい)(れい)は素早くベルトを緩め、ズボンのジッパーを下ろした。 慌ててその手を止めた。 「(れい)、まだ発情期になってない」 「そんなことはどうでもいい、もう我慢できない。お前だってフェロモン出してるじゃないか。もうヒート状態になってるだろ」 そんなことを言われたら、確かに自分の身体は既に発情期と同じ状態になっている。 (れい)は俺の顔を見ながら唾液を音を立てて飲み込んだ。 発情したオメガのフェロモンがどんなものかを(れい)は子供の頃の記憶として知っていた。 だが大人のそれは想像以上に強烈だった。 どんな強い意志をもってしても抗えそうにない。 だが、世間ではこれがアルファの弱点となって、自分達アルファを惑わすオメガを淫乱だと卑下し差別しようとする。 アルファはあらゆる才能に恵まれ、容姿も頭脳も運動能力も全てにおいて恵まれている。 だが中にはそれ程優秀ではないアルファも居て、そんなアルファが優秀なオメガを見下す。 アルファにとってもオメガにとっても、番を見つけることが自分を守る最適な方法だった。 特別な絆で結ばれ、伴侶となればオメガは発情しなくなり、アルファもまた他のオメガのフェロモンに影響されることはなくなる。
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