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居なくなった親友
怜は俺の発情した匂いに興奮したのだ。
「怜、怖いよやめろよ。怜」
その時部屋のドアが開いて母が入って来た。
母は慌てて怜の腕をつかみ、部屋の外へ連れ出した。
そして僕は母にこっぴどく怒られた。
「どうして部屋から出たの?出るなって言ったでしょ」
「怜が窓から入って来たんだよ」
「あなたが呼んだからでしょ」
「・・・・・」
それ以来、怜は僕の前から居なくなった・・・・・
発情期が終わって学校へ戻っても、二度と怜に逢う事はなかった。
後から分かったことは、怜はアルファで全寮制の学校へ入るために転校したと言う事だった。
月迫 怜は両親も兄もアルファだった。
彼の父は有名なスポーツ選手で、母は若いころも今も美しい事で有名な女優だ。
怜も子供ながらにカリスマ性があって、クラスでも人気者で何をやっても右に出るものは居ないと言われるぐらいスポーツも勉強も素晴らしく、容姿端麗なアルファ男子だった。
子供の頃は特に意識する事も無く、怜と仲良くしていた。
両親とも僕に優しく、僕の両親も怜の事が気に入っていた。
だから、僕たちはいつも一緒に遊んだ。
でも発情期が来て、俺がオメガだと分かってから彼の両親も僕を怜から遠ざけた。
学校からも居なくなって、家も引っ越して何処に行ったのかもわからなくなった。
中学へ入った頃には、怜の事は僕の記憶からも消えていた。
僕の入学した中学校はオメガ専用の学校で、全員がオメガだから発情期が来ても気にすることもなく、嫌な思いをする事も無かった。
先生や他の職員も全てオメガだから、学校で発情してもすぐに対処してもらえた。
通常は定期的に抑制剤を飲んでいるけど、たまに急に発情することもあって、そんなときでも安心だった。
高校も同じ系列だから、俺はもう何年も自分がオメガだと言う事すら忘れて過ごした。
同じオメガでも俺は特に目立っていた、容姿も成績も他のオメガより抜きんでていたし、スポーツも得意だった。
男同士でも好きだと言われるのは嬉しかった、オメガ同士なら発情期に関係なく付き合えるし、キスもセックスも楽しかった。
だが身体が出来上がる頃になると、オメガの特徴が顕著になり激しいヒートと共に子宮が形成され、「番」となる相手を求め始める。
そうなると同じオメガには興味が無くなり、自分の運命の相手となる「番」のアルファを探す。
そして見つけた番と咬合し、その相手にしか発情しなくなる。
番となったアルファも他のオメガには興味を持つ事も無く、自分の番だけを大切にし子供を持ち幸せに暮らせるのだと言う。
だがアルファの数は圧倒的にオメガよりも少なく、運命の相手に巡り合うのは奇跡にも近いと言われていた。
番を見つけられないオメガは、発情の度に身体は敏感になりそのために抑えきれない情欲に苦しみ、強いフェロモンに引き付けられたアルファに襲われることも多い。
だから僕は一刻も早く運命の相手を見つけたかった、大学に入ってアルファやベータ、オメガが一緒になってからも、俺の番になるべき相手は何処にもいなかった。
これはと思うアルファに告白しても、同じような理由でことごとく拒否される毎日だった。
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