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原因究明
月迫 怜が准教授としてこの大学に来てから1か月が経った。
その間、電話でしか話せない関係が続いていた。
逢いたかった、逢って怜をもっと感じたかった。
拒否反応が起こる理由は分かったはずなのに、怜が俺に嫌悪感など持っているはずもないのに・・・・・
あの症状が起こると分かっていながら逢う事はできない。
「獅将、お前の初恋の相手があの准教授だったのか?」
「そうだよ、子供の頃の話だけど・・・・・」
「今も好きなんだ」
「忘れてたけどな」
「あいつはアルファなんだろ?良かったじゃないか」
「まぁな、身体は拒否してるけどな」
怜に拒否反応が起こる理由が分からない以上、逢う事は諦めなければならない。
その間も怜は時間を惜しんで原因究明にあたっていた、資料を探し専門医師をあたり、あらゆる機関に問い合わせをしては同じような事例がないかを探していた。
だが同じような症例はどこにも見当たらず、アルファに対して拒否反応を起こすオメガは俺以外には居なかった。
最後に怜が導き出した答え、それは拒否反応の原因は俺自身ではないかという事だった。
拒否反応を起こすのは、相手が自分をどう思っているかだった。
オメガに対して嫌悪感を持ったものを、事前に察知し身体が拒否した結果起こる反応だった。
なら、怜に対する反応は・・・・・俺自身が怜を拒否している。
俺が始めて発情期を迎えた日、あれ以来怜に逢えなくなった俺は心のどこかで、逢えない怜を恨み拒否していた。
無意識のうちに置き去りにされたと思い込み、そんな怜を恨み逢えない理由を怜のせいにしていた。
あの日の記憶が鮮明に蘇った。
あの日、発情期の俺は自分でも気が付かないフェロモンを出していた。
それに反応した怜が俺に襲いかかったとき、俺の身体は反応していた。
怜が欲しくてたまらなかった。
怜になら何をされてもいいと思っていた。
だが、そんな俺を怜は置き去りにした。
でも本当はそうじゃないことは分かっていた。
母親が怜を家から追い出し、それを聞いた怜の両親が怜を俺から遠ざけた。
遠い所にある男子校の寮に入れ、大学はイギリスへ留学させた。
怜にはどうすることも出来なかった・・・・・
やっと大人になって、帰国した怜は俺の行方を捜し、この大学にいることを突き止めた。
それなのに・・・・・俺に逢いに来た怜を俺は拒絶した。
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