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空がくらいとおもったとたん、すぐに雨はふりだした。するどい雨が、バシバシとタケルとぷにゅぷにゅにおそいかかった。
たまらず、タケルは近くのバスていのやねの下にもぐりこんだ。ほかに人はいない。しばらくあまやどりさせてもらうことにした。
「ごめんね。ぷにゅぷにゅ。いたい? くるしい? ぼく、なんにもしてやれない。ごめんね。でも、なんとかするから。きっと、きっと」
タケルの目から、おおつぶの涙がこぼれた。かかえきれないほどの不安が、タケルのむねをいっぱいにした。
シャーっと水をかき分けると音がして、バスがとまった。プシューっとバスのとびらがあいて、なんにんか人がおりてくるけはいがした。
タケルは、下をむいて、なんとかなみだをとめようとがんばった。
「おや、これはまた、きぐうですね」
声をかけられて、顔をあげると、そこには、あの男の人がたっていた。
「あ、あの。ぷにゅぷにゅが弱っちゃたの。たすけてほしいの」
タケルは、なみだをみられることもかまわないで、男にこころからたのんだ。
「お水をあげても、もとにもどらないの。病気なの? なおせる?」
男は、こころからもうしわけないという顔をして、タケルにあたまをさげていった。
「これは、わたくしのせつめいがわるかったようです。もういちどせつめいしますと、これは、ブルー・グウーというオモチャです。つかいすての、いちどきりつかえるオモチャです。しようきげんは三日ほど。なおすことは、できません。もうしわけありません。」
タケルのからだにでんきがはしったみたいだった。
「オモチャ? いきものじゃないの? もう、いっしょにいられないの?」
タケルが信じられずに、そうことばをこぼすと、男はもういちどふかぶかと頭をさげた。
そのしぐさに、タケルはどうしようもないせっとくりょくをかんじて、これ以上なにもいえなくなった。
「ぷにゅぷにゅ、ごめん。ぼく、たすけてやれない。ごめん。ごめん」
「キュー」
よわよわしくこたえるぷにゅぷにゅを、タケルはそっとだきしめることしかできなかった。
男は、しばらくそのようすをみつめていた。そして、うんとうなづくと、タケルにこうきりだした。
「もし。なおすことはできません。『ぷにゅぷにゅ』くんは、このまま消えていくうんめいです。ですが、べつのブルー・グウーをおわたししてもかまいませんよ」
「どういうこと?」
「新しいオモチャをさしあげることはできます。いえ、それくらしかわたくしにはできません。もうしわけない」
タケルは、すぐに首をふった。
「ぼくね、ぷにゅぷにゅがすきなの。このこ、ぷにゅぷにゅっていうの。このこが、ぷにゅぷにゅなの」
「わかりました。ではせめて、おうちまでおおくりしましょう」
男は、まっ黒で大きなカサを広げると、タケルをカサのなかにまねいた。
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