Shining Days

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「学校を花で埋め尽くす」という咲楽先輩の計画は、次の委員会活動から早速行動に移された。  委員総出で校内の花壇に向日葵の種を植えたのである。  四月の下旬だった。 「ったく、なんで俺たちがこんなことを」  うらめしそうに友平がスコップを土に突き刺した。 「ほんとにね」  去年までの美化委員はあまり活動していなかったのか、花壇は荒れに荒れていた。種を植えるまでに、雑草を抜いたり土を耕かしたりと結構な重労働を強いられる。  しかも、校内に花壇は何か所もあった。  この分だと明日の筋肉痛は避けられそうにない。 「それになんだよ向日葵って。小学生の自由研究じゃあるまいし」 「無駄口を叩くな、須永二年生。口ではなく手を動かすんだ」  文句たらたらの友平を咲楽先輩が注意する。 「手も動かしてます」  友平が食い下がった。 「では、もっと苛烈に手を動かすんだ。ぐずぐずしてると夏が来てしまう」 「まだ四月っすよ」 「『まだ』というのは危険な言葉だよ。時間は有限であるということを忘れさせる」  咲楽先輩と友平の会話を聞き流しながら、ぼくは淡々と種を植えていた。土を柔らかくして、穴を掘って、種を入れて、穴をふさぐ。なんだか機械にでもなった気分だった。 「小田島二年生を見習いたまえ、須永二年生。夏に向けて黙々と準備を進めるその姿勢を」 「はあ?」  ぼくは軽く頭をはたかれて、 「お前なに真剣に掘ってんだよ。楽そうだから入ったんじゃねーの、美化委員」 「いや、まあ……」  そう言われると具合が悪い。たしかにぼくは、どうにも見栄えが悪い通知表に少しでも記載できるものが増えればと思い美化委員に入った。その程度の動機だから、当然そこには友平に指摘された思惑が存在する。学級委員会とかなんとか実行委員会とかは色々大変そうだし。 「理由なんてどうでもいいんだよ。大切なのは『なぜそれをしたのか』ではなく『どれだけそれができたか』だ。要は気持ちだよ」  咲楽先輩が言う。 「うっ……」  煙に巻かれた感が否めないが、ひとまず、そう言われたことで友平は口を閉ざした。単に反論するのが面倒になったのかもしれない。 「想像するといい。花壇の中に所狭しと咲き誇る向日葵の姿を。初夏の黄色に染め上げられた我らが学び舎の姿を」  委員全員を鼓舞するように咲楽先輩は言った。 「素敵だろ?」    咲楽先輩の言ったことを頭の中でイメージしてみる。  たしかに素敵だった。
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