1日目

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1日目

カラスは汚い街を見下ろしていた。 ゴミで溢れ、こころなしか空も灰色。 高いビルだけがそびえ立ち、緑色は一色も見えない。 カラスは知っていた。昔の街はこんなふうではなかったことを。 灰色の空から下降し、一つのゴミの山へ向かう。 バサバサと黒い羽が舞った。 音も立てずに地面へ足をつけた。 ひんやりとしており、ぬくもりも何も無い。 この街に人は何人残っているのだろうか。 静けさに溢れたこの街にはもう価値はないのか。 カラスはビルを見上げる。 作るだけ作って汚くなったら見捨てる。 自然を壊して、その後になにか対策を考える。 事実、このゴミで溢れた街は地球のゴミ箱的存在になっていた。 人間は皆、ここにゴミを捨てにやってくるのだ。 「なにをやってんだろうな、人間は」 カラスはゴミ袋を漁る。 ラッキー、ポテトがあるじゃん。しかもほぼ食べていない。 ゴミ袋からポテトの袋を取り出す。くちばしで鋏み、中身がこぼれないように。 そのまま地面に転がしポテトをつつく。 久しぶりの食事だ。これは美味い。 最後の一個を口に入れようとしたとき、勢いあまりポテトが転がっていった。 「おっと」 少しだけ翼を動かしその先を追う。 ポテトに追いつき口に収める。 すると。 「なんだあれ」 見渡す限りのゴミ袋。 カラスはそのなかに光り輝くものを見つけた。 ロボットだ。 黒い羽が空を飛ぶ。 カラスはロボットに向かって飛んでいった。 「こんにちは、ロボットのお嬢さん」 カラスはロボットの少女に向かって挨拶をする。そしてそのまま座り込んだ。 少女はゴミに埋もれたまま機械の音を出した。 「コンニチワ、カラスサン」 少女は顔色人使えなかった。ロボットだから、なのか。 「君は捨てられたの?」 カラスはロボットの顔を覗き込む。 「チガウ、ハカセがここに連レテきたダケだ」 なるほど、人間というのはやはり身勝手なものらしい。 カラスは電源を自ら落としてしまったロボットのそばを去った。
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