3日目

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3日目

いつのまにか眠りこんでいたカラスが目を開けると、眼の前にロボットの姿が写った。 いや、昨日だって同じ姿を見てはいたが。 そうではない。 ロボットの少女はゴミから這い出て、立ち上がっていたのだ。 「オハヨウ、カラスサん」 全身を見るとひどいものだ。今にも壊れてしまいそうなくらいサビがこびりついている。 一体いつからここにいたのだろう。 少女は立ち上がったままカラスの体をすくい上げた。 「カラスサん、この街はイマからきれいにナル」 少女はうれしそうにわらっていた。 「ニンゲンがこの街をきれいにしにクル」 彼女はカラスの羽を軽くなでた。 「人間がくるのか?」 「ウン」 ロボットはカラスを地面においた。 「ヨカッタ、これでカラスサんのスキなマチがもどってクル」 コロコロと人のような笑い声を出した。 「なぜそんな事がわかったんだ」 ロボットは歩き出した。 ギシギシ、とサビが酷い。 「デンパをカイシュウしタ」 ロボットの少女はそれだけを言い残すと、どこかへゆっくりと足を進めた。 「どこへ行く気だ」 「ハカセのトコロ。デンパをカイシュウしたおかげデ、バショがわかった」 その錆びついた体で行くのか。 その言葉は飲み込んだ。代わりに一つ。 「わかった、頑張れよ」 「ウン」 ロボットはギシギシと体を鳴らしながら歩く。 カラスはその姿を見つめていた。 と、急に少女は足を止めた。 「どうした」 「カラスサン、わたしの名前はナナ」 ロボットの偽物の髪の毛が揺れた。 彼女はカラスの方を振り向く。 「いつかまた会えル日まで覚えておいてホシイ」 カラスは大きく頷く。 ロボットもそれを見て頷く。 静かな街にギシギシと歩みを進める音だけが響いていた。
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