お兄ちゃんの忘れ物

みつば公園→さわやか商店街

　住宅街を抜けると、500mくらいの商店街がある。向かい合うお店が挟む通路の上にはアーチ型のアーケード屋根が付いていて、日差しや雨から人々を守ってくれている。古くからのお店が多く、ここ1、2年でシャッターが下りたきりのお店も増えてきた。いつだったかママが、なんでも売っている大きなショッピングセンターが出来たから、みんなそっちに買いに行くようになったと言っていたっけ。

「昔から知っているお店がなくなるのは寂しいわね」

　ママは、お兄ちゃんとボクを連れて商店街に行くと、お惣菜屋さんでコロッケ弁当を買った。このお店はもうすぐ閉店するから、最後に思い出の味を食べておきたかったんだって。

　あれから随分経ったけど、あのときよりシャッターの下りているお店が増えたような気がする。もちろん、まだ営業時間前で閉まっているお店もあるんだろうけど。

　さわやか～　さわやか～
　みんな笑顔で　さわやか～にお買い物～
　さわやか～　さわやか～
　いつもお値打ち　さわやか～商店街～

　通路の途中に建つ街灯に括りつけられたスピーカーから、商店街の宣伝歌が流れている。繰り返し、同じメロディ、同じ歌声、同じ音量で。

　自転車が何台もボクを追い抜いて行く。商店街を抜けた先には、電車の駅がある。スーツを着た人、制服の人。誰もが早い足取りで、お店にもボクにも見向きもせずに商店街の外に吐き出されていった。