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ミズエは不安で仕方なかった。もう占い師の元には行けない。これ以上はご法度と言われたからだ。しかし、不安の大きさからいてもたってもいられなかった。この赤く染まったままの石も気になる。
気づけばミズエは占い師の元に出向いていた。この願いが叶うなら多少の犠牲は仕方ない。不安が大きすぎて並ぶ目の前の女性たちを刺してでも早く進みたいと気が焦っていた。
──どけよ。お前たち……私の崇高な願いを邪魔するな。お前たちの願いなんてたかが知れてるだろ!──
まるで幸運の石のようにミズエの目は血走ったように赤くなっている。
ミズエの番まで回って来る。最初の頃のミズエはいない。声も掛からないうちにドアノブを握り締める。
「待ちなさい。あなたはもうすでに三回ここを訪れている。ここに入ればあなたは後戻りが出来なくなる。チャンスは訪れましたよね……どうしてそのチャンスを掴まなかったのですか?」
中から止める声がする。
「掴もうとしました。最後に告げようと……でも邪魔が入って。ですからもう一度だけお願いします」
扉を開けようとするミズエ。
「待ちなさい。ここに来てはダメです……」
しかし、ミズエは聞く耳を持たずドアを開け中に飛び込んだ。
幸運の石がバッグの中でさらに赤く熱を持って光る。ミズエはその光に飲み込まれる。
「あぁ……もうどうにもなりませんね……もうあなたは石に喰われてしまった」
占い師は溜め息を吐き呟いた。
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