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ミズエは目を覚ます。
「私……どこにいるの? 確か占い師の所に……」
ミズエは今いる場所が分からない。何かおかしい。思い通りに身体が動かない。それに……
目の前にはタカシがいる。
──どうして、タカシさんがここに?──
タカシはミズエを見つめている。
「好きです。付き合ってくれませんか?」
彼から告白された。
「お断りします……」
勝手に口が動いていた。
──えっ? 私は今、なんて言ったの? 嘘でしょう……もちろん私もあなたのことが……えっ? 言葉が出ない。大好きな彼が目の前にいるのに、なんで言葉が……私も……私も……──
まるで閉じ込められたように言葉が彼に届かない。
──いや、ちょっと待ってよ、待ってよ。私、ここにいるのよ。なんでどうして……──
「前からうっとおしかったんです。同じ会社だから食事に付き合いましたけど……」
ミズエは口にしている。
──そんなこと思ってない。思ってない! なんで気持ちが伝えられないの!?──
そこに女性が声をかける。
「あら、タカシさん、この前は資料の件で連絡してすみません。急ぎだったので。助かりました……えっ? これから彼氏とデートですよ。それじゃあ……」
彼に話かけてきたのは先日のトモヨだった。
「それじゃ……」
ミズエはタカシに背中を向ける。
──だめっ……勝手に動かないで。なんで……タカシさん! 私、ここにいる……私、あなたが好きなの!!──
ミズエの体は勝手に彼から遠ざかる。私の意思はあるのに私の身体は私の意思を受け入れなかった。
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