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順番待ちをしている間に少し異様な空気にミズエは気づいた。並ぶ女性たちは皆、まるで焦燥感に煽られたような顔をしている。異常に落ち着きがなく空気が張り詰め、集中力さえないような雰囲気。しかし、いざ館から出て来ると晴れ晴れとした顔をしてやる気に満ちている。まるで脳内や身体から何かが切れそれを求めるために並ぶ感じなのである。
「ねえ、ハルナ。ここに並ぶ人たちって何かおかしくない?」
「そう? みんなそれなりに叶えたいことに必死なんじゃない?」
ミズエは将来の自分がこうなるのかも知れないと思うとぞっとしてしまった。もしあの扉の向こうを潜ってしまえば取り返しのつかないことになるような気がした。
「やっぱり、止めようかな」
ミズエは呟いた。
「止めるのは勝手だけど、でも彼と結ばれたくないの? タカシさんだっけ……」
「タカシさん……」
思わず名前を呟くと何故か足が言うことを聞かずその列に立ち止まってしまった。
そしてミズエの番になり、扉を潜ってしまった。
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