そんな弟に兄は……

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そんな弟に兄は……

 ━━━  ━━━━━━  ━━━━━━━━━━━━  「━━━━………んぅ、は、━━ッ、あら……、」  静寂な入院中の個室にて。純白とオフホワイトが交互に配された壁紙に囲まれた清楚。  今は、シンプルな若き男が二人のみ。    互いの熱が絡み合い、熱っぽい吐息が全体へ浸透していく。  熱気が籠り、淫靡な世界へと変わっていく。  最初は、長かった一呼吸が、口づけが深くになるにつれ徐々に短くなっていた。 「かい、り、かいり…、あッ、もっと━━━」  今でも嵐に胸ぐらを掴まれたままの行為で、離れることを許されずまま。この荒々しい快楽をぶつけられていた。  息継ぎを忘れてしまうほどの……この淫行。  ━━━━兄弟、という立場を忘れてしまうほどに。  それでも互いの存在を確かめ合うように、  下唇を軽く噛んだり、  ちろり、と舐めたり、  唾液を絡ませて、しゃぶったり……。    昨夜のことを覚えているこの身体は期待しているのか……。下腹部辺りから、じゅくり、じゅくり、と海里の胎に、一度冷めてしまった熱が持ち始めてきていた。  帯びてきた熱はマグマのように煮え滾り、男性の一部が膨れあがっていくばかりで。  今では、とぷり、と愛液を雫を一つ垂れ流す、鈴口。  今でも、与えられている愛撫の快感。  次第に、とぷっ、とぷり、と啜り泣きし始めた先端。喜悦、慰めて欲しいが混ざり合った膨張は、下着の布を小刻みに擦っている。 「ーーーあッ、んぅっ……、ま、て。あら……し。これ以上は……ッ」  その小さな刺激にさえ、敏感になっている身体。雄の味を思い出したのか胸の飾りにも熱を持ち始め、ぷっくりと尖り始めていた。     (我ながら、浅ましい身体だと情けなくなってくるばかりだな……)  心と身体に一貫性が無いと、海里は痛感してしまう  嵐という獣に、またしても唇を奪われて、流されて………。  そして、熱を帯びている肉厚舌は隙間から、するりと海里の舌が絡めてきた。  すると、掴まれていた胸元が緩くなっていく。  そのことに気がついた海里。だが、若干酸欠になっている脳は働かず、抵抗ができない。  やがて胸元が完全に解放されて、やれやれ自由になったと安堵した海里。  それは、一時だけだった。  ふと、嵐の左手がの右肩へと、そっと置かれる。壊れ物を扱うように優しく置かれた指の腹で病衣の布を一つ撫でる。  まるで、俺のモノ、と言わんばかりに愛でる仕草。  この何気ない事でも、甘い熱が生まれ心臓の血流が沸騰しそうになる。 (嵐に触れられて、…………喜んでいるのか?この身体は)    前より濃く変わっていく自身の身体に、ふと思った事だった。  気づいてしまった。いや、━━━もう……、とっくに前に気づいていた。  でも…………、認めたくない自分自身がいて。  この感情は、一時の迷い。  家族愛が、ちょっと捻じれただけの若気の至り。  それに………、 (━━━━━━この行為は、巴さんを手に入れるためにしている、弟の罠なのだから)    兄のそんな想いが過ぎる中。心に涙が込みあがって、流れて落ちていく。  このまま、一時の迷いの気持ちも流れればいいのに……。━━という、考えが生まれたが、今でも続いている愛撫の拷問に勝てやしない。  身体は、喜んでいるのに。ーー心は、引き裂かれていく。  ふと、思考の海から浮上すると。  弟の空いている右手がいつの間にか背中に回され、海里自身を包んでいた。  そして、ゆっくりと押し倒されていく。  熱にふやかされた弟の表情が視界に映す。その背後に見えていた、オフホワイトカラーの壁の風景が消えていく。  スローモーションに変化していく視界。徐々に上へと移動し、天井へと終着した。  ひんやりとした室内の空気。それに包みこまれていた背中は、ベッドの柔らかさに包み込まれていく。  最後に、ぽふん、と優しく倒れこむように仰向け状態になった海里。  視界に映し出されている風景が、一気に変わった。変わっていないといえば……熱に溺れた弟の表情くらい。  背中を丸め、前かがみの状態の嵐。相手の目線に合わせて腰を低くしつつも、口づけに夢中になる。  角度を変えつつ。こちらの熱を帯びた舌を逃さぬように、裏筋を舐めたり、全体を包み込むように嬲る。  時折、先端を軽く突いたり、吸ったり……甘噛みをしたり。  そんな不規則な甘い刺激に、今だに慣れていない海里の未熟な舌。相手にされるがままに、淫靡の波に溺れていった。  甘く、蕩けていく……この淫らな禁断。  自分たちが実の兄弟だと忘れてしまうほどに、惹かれ、一つに溶け合っていくのを感じてしまう。 ━━━━━━このまま、ずっと続けば良いのに……  そう思ってしまうほど、惹かれていく弟からの愛撫。  自分自身の中で、何かが変わってきている。  だが、それを認めたくない。いや、ーー認めてはダメだ、という気持ちも負けずに湧き出ていた。  これは、兄としての意地か?それとも、海里個人の意地か……?  そんなモヤモヤとした考えの中。互いの熱を絡められていた舌が緩やかな動きになっていった。  後に、置いてけぼりをし弄んだ海里の舌を、ちゅるりと吸い上げる。盛大な淫音が響き渡り、海里の聴覚の神経に浸透し犯す。  だが、嵐からの愛撫は更に加速する。   「━━━━━━あッ♡」   突然、ピリっと甘い電流が駆け走った。  それは、左胸からだった。  思わず重なっている唇から喘ぎ声が漏らしてしまい、背中が弓なりに反ってしまう。   「…………ん、ッ、気持ち良い?海里……。ん、もっと気持ち良くしてやるからな」    
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