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 学校に小走りに向かう小春が七緒に語りかけます。 『ねえ七緒、お百姓さんたち悪くなかったんだね』 『そうじゃな。真実がわかった今、民には何の罪もない。むしろ被害者ではないか。おそらく五辻の手の者が民らの反乱と偽り報告したことで幕府からの厳罰を受けたのじゃろう』 『悔しかっただろうね……』 『そうじゃな……』  小春はギュッと唇を曳き結び、足を速めました。  学校に着いた小春は体育館に向かいます。  中では、稽古も大詰めの演劇部員たちが汗を流していました。 「英子!」   小春が来たことに演劇部の部員たちは驚きました。 「小春! 戻ってくれたの?」  小春はそれに答えず辺りを見回します。 「先生は? 今日、来てる?」 「うん。すぐ戻って来られると思うけど」  部員たちの視線が自分に向いていることに気づいた小春は俯きました。 「ごめん、邪魔しちゃったね」  小春は稽古の邪魔にならないように壁際に移動します。 「小春……」  演劇部に戻ってくれたのかと思った部員たちは少し落胆しましたが、声を掛けられるような雰囲気ではありません。  そこに顧問の先生が戻ってきて、小春が駆け寄ります。 「先生! 先生の先祖ってこの辺りの侍でしたか?」 「おっ! 高岡! 戻ったのか。みんな待っていたんだぞ」 「そうじゃなくて、先生の先祖!」 「先祖? どうしたんだ、いったい」 「いいから教えてください、五辻先生! この辺りにいたお侍ですよね?」 『五辻! 五辻と申したか!』  七緒が叫びます。 「あ……ああ。どうもそうらしいが。でもなぜ急にそんなことを?」  訝し気な顧問の五辻幸人に小春が畳みかけました。 「秋葉城の城代だったでしょ?」 「城代? いや、それはわからないけど、岡崎の城の重臣だったと聞いたことはある。興味ないしよく知らないんだ。それがどうかしたのか」  七緒が腹から絞り出すような低い声を出しました。 『小春! 間違いない。こやつが五辻斉彬の子孫じゃ。よくぞ見つけた。褒めて遣わそうぞ。さあ! そこに直れ! 一族郎党みな手打ちにしてくれる!』  七緒はそう言うと小春の身体を操って五辻に襲い掛かろうとしました。  五辻は驚き、飛びのきました。 「高岡! どうしたんだ! やめろ!」  なおも襲い掛かろうとする自分の体を抱きしめて小春が叫びました。 「違ぁぁぁう!」 『!!!!!』 『違うよ七緒。復讐ってそういうことじゃないでしょ? 先生が五辻の子孫なら別の方法で償ってもらおうよ。悪いのはその斉彬っておっさんだけで、先生じゃない!』 『……別の方法とは、何じゃ』  驚き、尻もちをついた五辻に小春が言いました。
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