現場

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『珈琲大陸』 という名の喫茶店は、昔からあるであろう住宅街にすっかり溶け込んでいる。 そう広くないお店なら中西さんと顔を合わせてしまうわね…中が見えないドアから少し離れたところで立ち止まったまま、どうしようかとスマホで時間を見る。 “10:00”に変わる瞬間を見た私の側に人の気配がして、一人…また一人…ダークブラウンの木製ドアを開けて店内へ入って行く。 3人見送る間に、一番出入り口近くに座ってみようか…と考え、さらに、この辺りに何かあったかしら…ともう一度スマホを見て操作する。この周辺にあるもの…もし中西さんと顔を合わせたら“◯◯に行くところ”と言えるように…でも特に何もない住宅街が続いているようだ。 駅近というだけがアドバンテージの喫茶店。それでも駅から目立ってもいない。 という間にもまたお客さんは入って行く。 入ってみようか… 平凡で変わりない毎日だったから、こんなドキドキする行動は何年ぶり…と思い切ってドアを…っん…思ったより重いドアを開けた。 すると 「いらっしゃいませ、おはようございます」 すぐ左手にあるレジに立つ、蝶ネクタイとベストの喫茶店マスター服の男性から挨拶された。 「初めてでいらっしゃいますか?」 「……」 レジの向こうから出てくる気配もなく、初めてかどうか聞かれるなんて…
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