現場

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さっきの女性店員がスッとテーブルから一步離れて立ったのは、客同士の会話を途切れさせないためかもしれない。 「もうオーダーされましたか?僕はホットコーヒーお願いします」 「私も、ホットコーヒーで…」 ここで店員が下がると 「ケイコさんはオーダーされていたんですね。素敵なネイルカラーですね」 スギさんがケイコさんのナチュラルながらも、綺麗なピンクのネイルに目をやる。 「ありがとう、趣味の自前。気楽に喋ってね。フウコさんのブラウスがお似合いだな、と入って来られた瞬間に思ったわ」 「ふんわりした感じがいいですね」 とスギさんが頷いた時に 「失礼してもよろしいですか?」 テーブルの真横に男性が立った。 「どうぞ、掛けていただいたら。それとも私ケイコです…かフウコさん?」 やっぱりケイコさんは慣れているのだろうけど、男性の意図することをストレートに聞くから私はとても驚いた。 「ケイコさん、いいですか?」 「はいはーい、隣へ座るわね」 「フウコさん、僕で大丈夫?」 「スギさん…私…大丈夫も何も…全くよく分からないので、スギさんの方こそ…大丈夫ですか?」 「もちろん。綺麗な方とご一緒出来て良かった。結婚何年か聞いても?答えたくなければ答えなくて大丈夫」 「いえ…9年ですね。スギさんは?」 綺麗な方… 「7年半。ありがとうございます。ここの珈琲、美味しいよ?好き?」 運ばれた珈琲にミルクだけ入れたスギさんに頷き、少しずつ話をする。 「家で何使って淹れます?僕、かなりマシンを買い換えてるんだけど、今はサイフォン」 「わ、お手入れ大変そう」 「そこが一番かぁ。フウコさん、キレイ好きなタイプの理想的な奥さんなんじゃない?」
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