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最後の数分、ケイコさんたちがいた向こうの男女とも一緒に話をした。
「旦那の浮気相談してた」
と明るく言う女性と
「経験者が語るってことで」
とこれまた明るく言う男性。
「いろいろですね…」
そうつぶやいた私に
「いろいろよ。これからもっといろいろよ。楽しまなくちゃね」
私より年上らしきその女性が言って時間がきた。誰も連絡先とか言わないから安心だ…と思いつつ、店を出る。すると私が話をした以外の男女が互いにスマホを持っているのが見えた。
でも他の人は、きっと外で名前を呼ぶことはマナー違反なのだろう…さっと黙礼ひとつで散らばって行く。そのあっさりした様子は、もうすでにこのあとの仕事に気持ちが向いているようだった。
中西さんは…?
全員を見た訳ではないけれど…でもあれだけ定期的に出かけていたから来ていたはず。そう思いキョロキョロ…と周りを見渡すと
ハッ…さっき連絡先を交換していたであろう男女が軽くハグをしたあと、男性が女性の髪をそっと撫でた。嬉しそうな女性も誰かの奥さんのはず…
そこを通るのが恥ずかしくて反対側へ歩き始めて曲がり角を曲がる。遠回りだけど、こうして町内一周すれば駅へ出るはず…と歩いて、駅が見えたとき
「ぁ…」
珈琲大陸の方向から駅へ入らず、歩いて通り過ぎる中西さんを見かけた。やっぱり来てたんだ…そしてこのあとの約束?でもこの先で誰かと待ち合わせているであろう彼女のあとをつける勇気はなかった。すぐに見つかりそうな気がしたから。
駅のホームで電車を待ちながら、この周辺で食事とかするの?と、思った私は以前も見た周辺の検索をする。え…線路沿いに2軒の、いわゆるラブホテルが並んでいるの?やだ…中西さん…見ちゃった…そっちに行っちゃったわよ…
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