1113人が本棚に入れています
本棚に追加
「隣に引っ越ししました、中西です「よろしくお願いします」」
後半は夫婦揃って頭を下げる中西さんは、標準語のようで音が関西だね。
「秋山です。こちらこそ、よろしくお願いします」
と言う夫に合わせて頭を下げると
「秋山千愛でーす」
と娘がニコニコと女の子にだけ向かって言っている。さっきまでにこやかだった女の子が少し固まったのは、千愛の勢いに驚いたかしら?
「ちえちゃん、こんにちは。亜優です。亜優…こんにちは、は?」
「………こんにちは…」
可愛い…千愛をガン見したままお辞儀するから、へっぴり腰がなんとも可愛い。
「よろしければお受け取りください」
奥さんがあゆちゃんの手を離して『ご挨拶.中西』と熨斗のかかったお米を差し出すと、千愛が手を出す。
「ちえちゃん、よろしくお願いします」
千愛が受け取ってしまったけれど
「ご丁寧にありがとうございます。あゆちゃんは幼稚園?」
お礼を言ってから聞いてみる。
「はい、アオハル幼稚園に通うことになってます。こう見えて、本人はちょっと…幼稚園の話はピリピリなんです」
「アオハル幼稚園、千愛も行ってたよ~」
「そうそう。だからあゆちゃん、大丈夫だよ」
夫の理由にならない大丈夫に、中西夫妻は良かったと顔を見合わせている。
「大丈夫じゃないのは、千愛だぞ~」
「どーして、パパ?」
「ゲームで叫ぶのも、ママに叱られて泣くのも、あゆちゃんに聞こえる」
「やばーい。けど、あゆちゃんも泣くと思うからいいや」
お口が達者になった7歳の娘と、会社員の夫、専業主婦の私…可もなく不可もなし…特筆することもない極普通の家族だ。
最初のコメントを投稿しよう!