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しばらくの間を置いて私も店を出た…何だか…私たち夫婦のあり方って…みたいなことが脳裏に浮かんだから。
そして、夫婦のあり方って…ないのかも…家族のあり方っていうなら当てはまるのかな…と思った。
「あら、こんにちは」
「え…ケ…あ、こんにちは…」
「あははははっ、お気遣い無用よ。ご覧の通り、私、この近所なの」
先日ここで一緒だったケイコさんが、可愛いトイプードルの散歩をしている。
「他にもここへ来る近所の方もいるし、ケイコも本名だしね。今日は楽しめた?」
ヒョイっとトイプードルを抱っこしたケイコさんが私に聞く。
「…はい……見知らぬ人からの言葉で気づきがあったり…ですかね…私、ママ友の詮索をし過ぎて失敗したことがあるんですけど…」
「ママ友ではありがちな話なんじゃない?同い年の子を持つ親同士の牽制のしあい、マウント合戦…あるあるよ」
「そうですね…で、ちょっとママ友からは距離を取っていたらお友達もなかなか…で、ここで気づき?ご近所とは仲良くしてますけど…」
何を言っているんだ、私は…
「ご近所は子どもの年齢も、自分の年齢も職業も関係なくお付き合いが出来るからでしょ?ここもそれと同じよね。だから1時間に満たない時間でも、そういう意識をしなくていいのが心地いいのよね。あなた、まだ若いんだからこれから楽しいことがたくさんあるわよ」
ケイコさんがそっとトイプードルを道路に降ろすと、一度ブルっと身震いしてから黒トイプーが歩き始める。
はぁ…いつの間にか自分の人生相談タイム?私って悩みがあったの?
そう思いながら駅へ向かおうとした私の後ろから、タタタッ…足音がすると…中西さんが走り去る。ホテルの方向よね?突然のことで驚いた私だけれど、すぐに彼女のあとを追った。
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