遭遇

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「ぇ………」 動きを止めた夫の想定外の言葉に固まったのは私だった。 「…マジ……浮気…?誰?」 「何っ?何いってんの?」 「違うのか…?」 「違うも何も…私が浮気ってホント何?」 そっと離れた夫に 「……疑ってるの?」 と聞くと 「いや、違うならいい。急に呼び方を変えたからびっくりしただけ。来週、言ってた出張だから…おやすみ」 と自分の布団へ戻ってしまった。 「……いいの…?」 「ん…萎えた…今度でいい…」 嘘でしょ?コウさんの言ったのと全然違うんだけど?どうしてくれるのよ…一瞬は疑われたわよ、絶対に。 少し緊張して迎えた翌朝、夫の様子はいつもと変わらずにホッとした。そして二人を見送ると…ガチャ… 「亜優、長靴はいらんやろ」 と言いながら、部屋着っぽい中西さんの旦那さんが出て来た。 「あ、おはようございます、秋山さん」 「おはようございます。お休みですか?」 「はい、この前一日休日出勤があった分で休みです。亜優、千愛ちゃんママに?」 「ぉはよーござぃまぁすっ」 「おはよう、亜優ちゃん。長靴履いてお出かけ?」 「おみず」 「お花に水やりね。パパと一緒でいいわねぇ」 小さなジョウロに水をいれるパパの背中にひっつく亜優ちゃんに手を振って私が家に入るのと入れ違いに 「ハルくーん、11時半でいい?その次の空いてる時間が13時からやねんけど…」 「お迎えギリはゆっくりデート出来ひんから11時半一択。直美のお腹ももたへん」 「あははっ…よし、11時半で予約オッケー。亜優、今日はパパと幼稚園行く?」 「ママと3人でもええよ」 「パパと〜ママと〜あゆ〜」 中西さんの声がした。名前…完全に夫婦の会話と親子の会話で使い分けか…羨ましいかもしれない。けど…彼女の正体は…
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