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仲睦まじく平日デートに出掛ける中西夫妻が、当たり前のように手を繋いで駅へ向かって歩いて行くのを二階の窓から見送ってから…千愛の布団カバーと枕カバーを剥がす。
そして二度目の洗濯機を回すと
「はぁ…」
何も変わっていないのに…何かが変わっているような気配にため息が出た。
その何かは自分でも分からないまま、翌週の火曜日…私は珈琲大陸ではなく、ホテルが見える場所で中西さんを待つことにした。
特に彼女に恨みがあるわけではない。けれど、あんなに優しい旦那さんを裏切る行為は許せない気がした。だから、ここまで目撃した以上、証拠を撮ろう…そんな気持ちだった。
彼女がここに現れるのは決まって11時頃。10:40くらいから彼女を待つ。
5月の後半でもう暑い日もあるけれど、今日は曇りでまだ暑さはマシ。でも紫外線には気を付けないといけないから長袖は必須アイテムだ。
もう11時になるわね…とスマホを手にする。駅に近いから自転車がよく通る道だな…と道路の隅っこに小さくなる。自転車にぶつからないためであって、コソコソとはしていない…ことないな…してるんだけど…
スマホと珈琲大陸の方向を順に見ること数分…まだ来ないな…と思った私のスマホに水滴が落ちる。
ぇ…雨?そんな予報ではなかったはず…
と、空を見上げると、またひと粒…予報士泣かせの通り雨?パラッと風で飛んで来た程度?と思った途端に
ポタポタポタポタ…大きめの雨粒が落ちて来た。慌ててスマホをバッグに入れる間に、さらに強くポタポタポタポタッ…薄いブラウスが肩に張り付く感覚に慌てて駅へ向かう私に
「フウコさんっ」
声がかかると同時にグイッと腕を引かれて、私は雨音の響く傘の中へおさまった。
「何やってるの?びしょ濡れだよ?」
「…スギさん…」
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