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何してる…って…
“安心:65cm”
というシールの貼られたビニール傘のハンドルと、それを握るスギさんの手に視線を落とした私に
「ここじゃ、濡れる」
彼はもう一度私の肘を掴み、ホテルの方へ道を渡る。
「えっ…」
「何もしないよ、大丈夫。でもそのままじゃ、タクシーにも乗れないんじゃない?」
スギさんの視線が私の上半身を上下する。
あ…ブラウス全体が体に張り付いて下着がはっきりと浮き出ている…
「部屋にドライヤーはあるから、それで乾かせば?」
この前は車でこのホテルに入るのを見掛けたスギさん。今日は歩いて…?誘ってる?
「何か…僕が疑われてる?まあ…場所が場所だからね。でも……フウコさんはお客さんを待っている女性のようだったけど?何してたの?」
「…………」
「いいや、いい。こっち」
そう言ってスギさんは傘を畳むと、ホテルの駐車場に入って行く。駐車場?車に乗るの?
「こっち。これ、僕の社用車」
彼が指差したのは先日彼が運転していた白い車で…社用車?
「今、このホテルの電気関係、順番に交換中なんだよ。そこの出入口のネオンをさっき消して、今日はそこの予定で、そしたら……フウコさんが道路のあっちの方にいて…声を掛けずにいたんだけど…」
「…知らなかった…」
見られていたんだ…
「あっちからは、隣のホテルの電飾看板で見えないかもね…僕もまだ道路で作業はしていないし。誰か来るの?」
「いえ…」
「じゃあ…ここから上がれるから、服を乾かして行けば?部屋は空いてるから」
スギさんは私に駐車場からホテルへ上がれる通路を教えてから
「僕は仕事に戻るよ」
と振り向きもせずに行ってしまった…
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